美容 求人 医師 求人 萌通新聞 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました 虚無と獣王(第十三話?第十五話)
2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | このエントリーを含むはてなブックマーク | コメント(-)

ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました 虚無と獣王(第十三話?第十五話)

kyomutozyuou.jpg

46 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/01(月) 22:50:58 ID:33q7p+iV
虚無と獣王
13  虚無と怪盗

「ちょっと気になってる事があるんだけど」
ウルの月、フレイヤ、虚無の曜日。
休日という事で訓練は無し、と言っていたにも拘らず夕食後になるといつものメンバーが集まってきていた。
虚無の曜日には唯ひたすら怠惰に過ごすと公言して憚らないギーシュまでもが来ていたが、訓練自体は行わず雑談に興じている。
ルイズが王都で買ってきた戦斧用の革紐を渡したり、それを見たキュルケが茶々を入れたり、長大だが流麗なデザインの戦斧をギムリたちが見たがったり。
そんな中で、レイナールがルイズに向かって話し掛けたのが、冒頭の台詞である。
「何?」
「ひょっとして愛の告白?」
「ななななななに言ってるのよキュルケ!」
いつものキュルケのからかいに反応したのはルイズだけで、レイナールはさらっとスルーした。反応すれば相手の思うつぼなのは判っている。
「怒らないで聞いてくれよ。ちょっと言いにくいんだが、ヴァリエールは魔法を使っても常に爆発してしまうんだよな?」
「今わたしはケンカを売られているのかしらよし買ったわ」
キキギ、とルイズの周囲で空気が軋むような錯覚を覚えたレイナールが慌てて言い繕う。
「売ってないものをいきなり買わないでくれないか最初に怒らないでって言ったのに!?」
ルイズは表情を全く変えずに答えた。
「つまり決闘を申し込んでいるのねよし買ったわ」
このままでは話が全く進まないと判断したクロコダインがため息交じりのフォローを入れる。
「少し落ち着けルイズ。それでレイナール、何が気になるんだ」
「なんでそんなに胸が小さいんですか、とか?」
混ぜっ返す事に関しては他の追随を許さないキュルケが絶妙のタイミングで口を挟むが、横で本を読んでいたタバサに杖で軽く頭を叩かれた。
「言い過ぎ」
キュルケは、普段はこういう会話に入ってこない親友がどんな形であれ参加してきた事に驚き、同時に喜びを感じる。
「ごめんね、そりゃタバサも聞いてて余り愉快じゃなかったわよねー。でも大丈夫、タバサはまだ成長期アイタ」
この謝罪はお気に召さなかったようで、また頭を叩かれた。今度はさっきよりも強い。
「続き」
「ん、ああ、えーと、みんな爆発するって言うんだけど、見た事がないからどうも信じがたいんだ。だって魔法理論から言ったっておかしいだろう?」
唐突かつ強引なタバサの路線修正に若干戸惑いながら、レイナールはようやく本題に入る事が出来た。
「おや、君はまだルイズの爆発を見た事が無かったのかい? 違うクラスでも一度くらいは目撃していてもおかしくないだろうに。一度見ておくと危険回避の重要性が理解できるよ」
「正直ぼくたちは見慣れちゃってるからなあ。君の疑問がかえって新鮮だよ。緊急時の対応とか身をもって覚えちゃったし」
同じクラスのギーシュとマリコルヌが好き勝手な事を言うので、ルイズは取り敢えず2人にローキックを放っておいた。
「あいたぁっ!」
「ぼくのふくよかなふとももに鞭のようにしなる蹴撃が!?」
たった一発のローでもんどりうって倒れる様を見て、クロコダインはいい蹴りだと感心するのと同時に仲間の女武闘家を連想した。そういえば髪の色も一緒だな、と。


48 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/01(月) 22:54:18 ID:33q7p+iV
使い魔にそんな感慨を抱かれているとは露知らず、ルイズはレイナールに向きなおった。彼がからかい目的ではなく純粋に疑問に思っているのは判ったので蹴りは出さずにおく。今のところは。
「あんたが疑問に思うのは当然よ。当のわたしも訳がわからないんだから」
どんな呪文を唱えても爆発してしまう。
四系統魔法はおろかコモンスペルですら例外ではないこの現象は、レイナールが言う通り現在の魔法理論を真っ向から否定するものだ。
そして、そんな事は当のルイズが一番よく理解している事でもあった。
幼い頃は母や姉、雇った家庭教師からもあり得ないと言われ、一縷の希望を託した魔法学院の教師すらも解説できない現象。
入学してから丸一年、自分でも時間の許す限り調べてはみたが、これまで失敗魔法が爆発を引き起こすという事例は見つける事が出来なかった。
そんなルイズにとってレイナールの質問は、理性では理解できても感情では「なに喧嘩売っとるんじゃボケぼてくりこかすぞワリャア」としか反応できないものである。
実際の発言が幾分ソフトなのはまだ理性が働いているからといえよう。
一方のレイナールは、ルイズには悪いと思いながらもどこか納得のいかない表情だった。
実際に目にしていないのに常識外の減少を鵜呑みにするのはどうにも抵抗がある。ルイズたちが嘘を吐いていないのは判っているのだが。
教科書に書いてない事が起きるのはおかしい、そんな頭の固い部分があるのに本人は気付いていない。割と内心が表情に出やすい事にも。
ここで微妙に空気が悪くなるのを感じたキュルケが話題を変えた。
「そういえば聞いた? アルビオンの内戦の話」
「ああ、王党派と貴族派に分裂しているらしいね。戦力は拮抗しているというじゃないか」
ローキックの痛みが和らいだのか、先日の食堂の一件で空気の読めない同級生に煮え湯を飲まされた(あくまで主観上では)ギーシュが話に乗る。
因みにもう1人の犠牲者はまだ転がっていて「たった一言でこの仕打ち! 痛い、でも、ああ……ああ……!!」とか呟いていたが、敢えて無視されていた。
ツッコんだら負け、という認識が何故か全員に行き届いている。VIVA・チームワーク。
「ちょっと、それいつの話よ? 国からの手紙じゃ、貴族派が圧倒的な数で王党派を押してるって話よ。軍人の家系ならもう少し情報を集めた方がいいんじゃない?」
肩をすくめるキュルケにギーシュが反論した。
「待ってくれ、ぼくがこの話を聞いたのは大体2週間くらい前だよ? キュルケこそ、その手紙はいつ貰ったんだ」
「一昨日ね。情報については間違い無い筈よ、実家の商売にも関わる事だし」
2人は顔を見合わせる。お互いの情報が正しいとして、こんな短期間で一方の軍勢が勢力を伸ばせる理由が思いつかないのだ。
「ねね、アルビオンて内戦状態だったの? そんな話聞いてなかったけど」
「ぼくも初耳だよ」
ルイズやギムリの質問に、キュルケはふう、やれやれ的な表情で答える。
「他国相手の商売している連中はとっくに警戒してるわ。まあ学生レベルにはまだ降りてこない情報かしら」
言外に「へー知らないんだーヴァリエール遅れてるー」と優越感を込めつつルイズの愉快な反論を楽しみにしていたキュルケであったが、期待した反応は帰ってこなかった。
つまんないわねどうしたのかしらとそちらを見ると、ルイズは目を点にし汗を流しながらキュルケの後ろを指さしている。
何か言おうとしている様だが口をパクパクさせているだけで言葉が出てこないようだ。
全くもうなんなのよ、と振り向いて、キュルケはルイズと同じ表情になった。
彼女の眼に映ったのは、30メイルはあろうかという巨大なゴーレムが本塔めがけてのっしのっしと歩く姿だったのである。


50 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/01(月) 22:58:08 ID:33q7p+iV
『土くれ』のフーケは、自らの作りだしたゴーレムの肩に身を伏せながら本塔を睨みつけていた。
神出鬼没の怪盗として名を売る彼女であったが、今回の様に派手な騒ぎを起こす事はこれまでの仕事には無く、正直に言えばモットーに反する。
闇を駆け、影の如く忍び寄り、獲物を捕らえた後は風の様に去る。
盗みに入られる側としてはふざけんなと言いたくなるモットーであるが、一応目撃者を少なくする事で口封じの可能性を減らしたり、護衛に怪我を負わせるのを防いでいる一面もあったりするのだ。
それが何故こんな派手にも程がある行動に出ているのかというと、早急に魔法学院を立ち去らなければならなくなったのである。
当初の予定としては学院の内部に入り込み、ある程度の時間をかけて内部構造を調べ上げた上で、芸術の様に盗んで行く筈だったのだ。
ところが義妹の住む国に内乱が勃発してしまい、色々訳ありの義妹を放置しておく訳にはいかなくなってしまった。
それでも宝物庫から何かちょろまかす時間位はあるかと思っていたら、馴染みの情報屋から「あー、アルビオンな、多分来月まで保たないで、いや王党派ボロ負けやぞ」と今朝がた聞かされた。
もはや一刻の猶予もない、とっとと盗んでさっさとアルビオンに帰らなければとフーケは判断した。
宝物庫の壁にはやたら強力な『固定化』の魔法が掛けられているのはこれまでの調べで分かっている。
その分物理衝撃には弱い、多分弱いと思う、弱いんじゃないかな、まチョット覚悟はしておけと、自分の親くらいの年の癖に変なアプローチをしてくる学院教師から聞き出したのは今日の昼休みの時間。
夕食の後こっそり壁の厚さを確認してみたが、流石に国内有数の宝物庫だけあって自分のゴーレムで破れるかどうかというところだ。
本当ならこの条件下で仕事はしないのだが、もうそんな事を気にしている時間は無かった。
ゴーレムのパンチで壁が破れればそれで良し、破れなくてもこのまま姿を消して故郷に帰ろう。金は無くとも義妹と、共に暮らす孤児たちの護衛くらいは出来る。
そんなことを考えながら、フーケはゴーレムの腕を鉄に『錬金』させた上で塔に殴りかからせるのだった。

「なななななななななによあれ───────────っ!」
ルイズが声を出せるようになったのは、ゴーレムが本塔を殴り始めてからである。
「なんだってあんなゴーレムが魔法学院を攻撃してくるのよ!」
「ぼくが知るもんか!」
ルイズの大声のお陰でキュルケ達も茫然自失状態から復活した。復活しただけで動けはしなかったが。
「ひょっとして『土くれ』のフーケか!?」
そう言ったのはギーシュだが、「でもあんな派手な事するか? 仮にも怪盗だろ」とギムリからの疑問には答えられない。
「ゴーレムが攻撃しているのは多分宝物庫の外壁」
ゴーレムの動きを冷静に観察していたタバサの指摘に、ルイズとレイナールが反応した。
「じゃあやっぱりフーケ!? わたしたちでなんとかしないと!」
「じゃあやっぱりフーケ!? 急いで先生たちに知らせないと!」
180度違う意見に2人は顔を見合わせた。
「ちょっと待って先生たち呼んでくる間に確実に逃げられちゃうわよダメでしょそれは!」
「じゃあ僕たちに何が出来るんだ相手は最低でもトライアングルクラスのメイジなんだぞ!」
がるるるる、と言わんばかりの剣幕のルイズに一歩も引かないレイナール、そんな2人にキュルケが話し掛ける。
「言い争ってる間に動いたら?」
見ればタバサとギムリ、ギーシュは既にゴーレムの方へ向かっており、マリコルヌは逆方向に走っていた。
クロコダインはルイズが動くまで判断を保留しているのか、ゴーレムを警戒しながら主を守るように立っている。
「行くわよクロコダイン!」
ルイズが走り出すのと同時にクロコダインも動く。
「ルイズ、判っているだろうが」
「無茶はしないわ! でも背も向けないわよ!」

フーケは焦っていた。
ゴーレムに渾身の力で攻撃させているにも関わらず、壁には亀裂すら入っていない。
近寄ってきた学生達が魔法で攻撃してくるのは大した妨害にはならないが、逃げ出す時の精神力を考えるとこれ以上時間を掛けたくはない。
教師達を呼ばれて退路を塞がれるのも面倒だ。次の一撃で突破できなかったら逃走しよう。
フーケはゴーレムの手を槍の様に変化させ、助走をつけながら塔へと突き出した。


51 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/01(月) 23:02:09 ID:33q7p+iV
30メイルもの巨体に通じる魔法は少ない。
ルイズ達はそんな現実を早々に突きつけられていた。
ドットメイジのギーシュ達はともかくとしても、トライアングルクラスのキュルケやタバサの攻撃も碌なダメージを与えられないでいる。
正確にはダメージを与えても、土を補充する事ですぐに回復しているのだ。
一番ダメージを与えているのがクロコダインの戦斧で、振るう度にゴーレムの体が爆発するかの如く吹っ飛ぶのだが、流石に一撃で体を消滅させる事は出来ない様だった。
「まずいね、一旦退いた方がいいんじゃないか?」
「珍しく意見が合うじゃない!」
ギーシュとキュルケの掛け合いに、ルイズは顔を歪ませる。
啖呵を切って駆け付けたものの、魔法の使えない自分はここでは足手まといだ。
クロコダインもゴーレムと戦いながらもこちらを気にしているせいか、全力を出せないように見える。
だが、背を向けて逃げ出すのは嫌だった。若い頃戦場を駆け、数多くの武勲を誇った母親の子として、弱きを守る者こそが貴族と教えてくれた父親の子として。
そんなルイズの目に、ゴーレムの手が鋭く尖って塔に突き出されるのが見える。
ルイズは咄嗟にありったけの力を込めて、フレイムボールの呪文を唱えた。

学院に大きな爆発音が轟く。
「何なんだい!」
悪態をつきながらフーケが前を見ると、塔に突き出した筈のゴーレムの腕が肘から消失していた。
「嘘だろ!? 鉄製に『錬金』しておいたってのに!」
どんな魔法かは判らないが相当な威力なのは確かだ。これはヤバいかともう一度前を見て、しかしフーケはこちらに運があると確信した。
ゴーレムの一撃が効いたのかさっきの爆発のおかげなのか、難攻不落だった宝物庫の壁に見事な大穴が開いていたのだ。
フーケはゴーレムに時間稼ぎを命じると、フードをかぶって宝物庫へと飛び込んだ。

ゴーレムの腕が吹き飛ぶのを、ルイズは信じられない気持ちで見ていた。
自分が唱えたのはフレイムボール、しかし杖から炎は出現しない。だが失敗した筈の魔法は元の魔法とは比べ物にならないほどの凄まじい威力を発揮している。
「ちょっと、やるじゃないの!」
笑顔でキュルケに言われるが、正直実感が湧かない。
「凄いな、でもあれを教室で披露はしないでくれよ? 命に関わるからね」
ギーシュが皮肉交じりに、しかし感心した様子で話しかける。
「やりすぎ」
タバサが無表情に、でもどこか焦った様子で指摘する。
「やりすぎ?」
ルイズ達はそこでようやく壁の大穴に気がついた。
「…………」
一瞬の沈黙の後。ルイズはゴーレムを見上げながら叫ぶ。
「学院の宝物庫に穴を開けるなんて! 敵ながら凄い実力の持ち主だわ!!」
うんまあそういう事にしておこうか、と学友達は思った。
「遊んでいる場合じゃないぞ、気を付けろ!」
再び動き出したゴーレムを見てクロコダインが注意する。
「間合いを取って、魔法で攻撃」
「もう一回派手な失敗頼むわよ、ルイズ!」
「いちいち引っかかる言い方ね!」
颯爽と、機敏に、あたふたと、生徒達はゴーレムから一定の距離をとるのだった。

52 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/01(月) 23:06:47 ID:33q7p+iV
薄暗い宝物庫の中、フーケは素早く辺りを見回す。人の気配なし、宝物が衝撃で壊れた様子なし、OK、今のところ問題なし。
取り敢えず片っ端から盗んで行く訳にはいかない。大量の盗品を捌いている余裕はないのだ。
だからと言ってサイズの大きな物を持ってはいけない。何か、適度に小さくて尚且つ高く売れそうな物はないか。
そんな彼女の眼に、ある物が映った。30サントほどの黒い筒状の何か。
学院長の秘書をしていたフーケは、それがオールド・オスマンが個人的に納めたというマジックアイテムだという事を思い出した。
使い方は分からないが、マジックアイテムという物は魔力を通せば動くと相場が決まっている。
フーケは筒を懐に入れ、レビテーションで下に降りようとして、
「おでれーた! まさかこんな所に盗みに入る奴がいるたぁ思わなかったぜ!」
突然声を掛けられ動きを止めた。
杖を構えて周囲を見渡すが、人の姿も気配も感じられない。
「おーい、どこ見てんだ。ここだよ、ここ!」
声のする方を見ると、そこには一本の剣があった。
おそらくは壁に飾られていたのだろうが、先ほどの衝撃のせいか床に落ち、鞘から刀身が半ば抜け落ちている。
「なんだ、インテリジェンス・ソードか」
フーケは溜息をついた。武器に意識を与えたインテリジェンス・アームズは別に珍しいものでもない。
「いやいや、そう言わねぇでくれよ。ちょっと姉ちゃんに頼みがあんだ」
「何よ」
「ついでと言っちゃあなんだが、俺も盗んでってくれね?」
「……ハァ?」
フーケがマジックアイテムを盗み出すようになってそれなりの月日が立っていたが、自分から盗んでくれと言いだすお宝は初めてだった。
「ほら、俺ってば見ての通り剣だろ? 斬ってナンボの商売なのにこんな蔵の中にいても仕方ないと思わね?」
言ってる事はもっともだが、刀身に思いっきり錆びの浮いている長剣を盗むメリットをフーケは思いつかなかった。
大体150サントはあろうかという剣など邪魔にしかならない。特にこれから逃げようという時には。
故にお喋りな剣は無視していこうと背を向けたのだが、剣はわざとらしい口調でこんな事を言った。
「あー、このまま置いてかれちゃったらあんたの特徴とかペラペラ喋っちゃうだろうなー、俺」
速攻で床ごと『錬金』してやろうかと思ったが、そんな時間も精神力も惜しい。
フーケは無言で剣を拾い上げると最後に1つお約束の仕事をして、壁の大穴から飛び降りたのだった。

53 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/01(月) 23:10:21 ID:33q7p+iV
突然ゴーレムが音を立てて崩れ始めた。
30メイルのゴーレムが土の塊に戻るのだから、当然大量の砂埃が舞い上がり、離れた場所にいるにも拘らずルイズ達の視界が塞がれる。
「なによ突然!」
叫び声を上げる彼女達に駆け寄るクロコダインだったが、予想外の現象は更に続いた。
周囲の土が盛り上がり、ドーム状になって彼らを閉じ込めたのである。
「きゃっ!?」
それまで塔から洩れる明かりや月の光で薄明るかったのがいきなり真っ暗になって、ルイズ達は悲鳴を上げた。
「ったくもう!」
キュルケが短く呪文を唱えると、拳大の火の玉が三つ浮かび上がり、辺りを照らす。
攻撃に加わっていた全員が10メイル程のドームの中にいるのが判る。幸い誰も怪我などはしていない様だった。
タバサがドームを杖で叩くと硬質の音がかえってくる。
「多分、鉄製」
土メイジのギーシュもドームに触って材質などを調べ始める。
「これは結構ぶ厚いぞ。土とかに『錬金』するのも時間がかかりそうだ」
「そんな! フーケに逃げられちゃう!」
そんな中、クロコダインは拳で何回かドームを叩いた後、ルイズ達に忠告した。
「今からこいつを破るから出来るだけオレから離れていてくれ。それと耳も塞いでおいた方がいい」
「判った、任せるわよクロコダイン」
主からの信頼の言葉に、クロコダインは太い笑みを返す。
彼女達が反対側の壁まで下がり、タバサが『サイレント』の魔法を唱えるのを見届けると、クロコダインは愛用の戦斧を逆手に持って逆袈裟に斬り上げた。
「唸れ!爆音!!」
グレイトアックスが壁にぶつかるのと同時に魔宝玉に秘められた爆裂系呪文が発動し、鉄製のドームを1/3程も吹き飛ばす。
「うええええええ!?」
「な、なんて威力なの……!」
感心する同級生を尻目に、タバサがドームの外へ出る。
既に外に出て周囲の気配を探っていたクロコダインに、「中を見て来る」と言い残し、『フライ』で宝物庫へと飛んだ。
半ば予想していた事だが宝物庫の中に人の姿は無い。
ぐるりと周囲を見渡して、タバサは壁に何か書いてあるのに気がついた。

[ 神隠しの杖と伝説の剣、確かに領収致しました。   土くれのフーケ ]

流麗な書体で書かれたその署名を見て、タバサは小さく呟いた。
「目立ちたがり」


238 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/20(土) 23:40:07 ID:aaf9zizy
虚無と獣王
14  捜索隊と獣王

トリステイン魔法学院から見事に脱出した土くれのフーケは、逃走経路として以前から当りをつけていた森の中で悪戦苦闘していた。
「ったくどうなってんだいこいつは!」
彼女が睨みつけているのは先程盗んだばかりのマジックアイテムである。
『神隠しの杖』という名が付けられているそれは、通常のアイテムとは異なりフーケが魔力を通しても反応を示さなかった。
スキルニルと呼ばれる魔法人形の様に血液がキーになる訳でもないとなると、おそらく使用するには特殊な条件が必要となるのだろうとフーケは判断する。
発動させるには他のマジックアイテムが必要になるとか、ある一定のポーズを順番に取っていかないと発動しないとか。
問題は、その条件とやらがさっぱり判らないという事である。
一応念の為に盗んできたインテリジェンス・ソードにも尋ねてみたが「えー、知ってる訳なかろ。剣だぜ俺」との返答だった。心底埋めてやりたいと思うが我慢する。
大抵のマジックアイテムなら後腐れなく捌く自信がフーケにはあったが、使用方法の判らないアイテムに気前良く金を払ってくれるモノ好きな好事家に心当たりはなかった。
取り敢えず、深呼吸を二回して気持ちを落ち着かせる。焦りや怒りは何も生み出さない。
今、自分が取れる行動パターンは2つ。

1・マジックアイテムを売りつけるのは諦めて故郷に帰る。
2・学院に戻って誰かからマジックアイテムの使用方法を聞き出して来る。

1は消極的な安全策で、自分の身は確実に守れるが内戦状態の故郷に残した義妹の安全は守りにくい。
2は大騒ぎの学院に戻る事になりリスクはかなり大きいが、その分リターンも大きくなる。
しばらく悩んだ末、フーケが選択したのは2の案だった。
せっかく盗んだ物を使い方が判らないからと言って諦めるのは惜しかったし、あの騒ぎの中でも自分の正体はバレていないだろう。
適当に理由をつけて学院長あたりから使用方法を聞き出してくればいいだけの事だ。
そうひとりごちて、フーケは残り少ない精神力で馬の形のゴーレムを作った。ここまで逃げて来る時にも使用したモノだ。
時間はまだ深夜には至っていない。さっさと学院に戻って少しでも休まなければ。
2つのマジックアイテムを下見の時に見つけていた無人の小屋に隠し、フーケは元の職場に舞い戻るのであった。


240 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/20(土) 23:44:01 ID:aaf9zizy
翌早朝から始まった事実確認の為の会議は、一時間も経たない内に責任の押し付け合いの場と化していた。
ルイズ達は第一発見者という事でこの会議に参加させられていたが、事情を説明する気力は既に尽きようとしている。
一応仮眠はとったものの、満足に眠れたとは言えない状態なのに宝物庫で教師達の言い争いを聞かされているのだから、それもまあ無理のない話と言えよう。
ルイズが欠伸を噛み殺しながら仲間達を見ると、ギーシュ、ギムリ、マリコルヌは既に夢の中へと旅立っていた。
レイナールは生真面目な性格の為か起きてはいたが、その眼は擦り過ぎて赤くなっている。
キュルケは授業中にもたまに披露している奥義『眼を開けたまま寝る』を発動させており、タバサに至ってはどこからか取り出した本を一心不乱に読んでいた。
唯一眠気を見せていないのはクロコダインだけだが、これはもともと生物としての耐久度が違い過ぎるだけの話だ。
クロコダインは使い魔という事で数には入っていないだろうから、まともに説明できそうなのはわたしだけね、と思うルイズだった。
それにしても眠い。いや寝ちゃダメ、ちゃんと先生たちに報告しなきゃ、でもタバサに次の会報の原稿を頼まれてるのよね。
あれも早く考えなきゃ、やっぱり巨乳の反対語は貧乳じゃなくて微乳だと思うのよ姉さまも書いてたけど、ああ壁の穴から入ってくる風が気持ちいーなー眠いーでもねちゃだめー、ちゃんとせんせーたちにー……
ハッと意識が戻る。ついうっかりと眠ってしまっていたようだ。まだ何分も過ぎてはいないのだろうが、どうもマリコルヌの軽い鼾で目が覚めたようだった。
しかし、ほんの数分でも休息を取った事で眠気からは解放された。覚醒のきっかけになったとはいえ、小太りのアレと同レベルにだけはなるまいと固く心に誓う。
ふと気が付くと、教師達はいつの間にか責任問題から誰かの尻を撫でるの撫でないのという心底どうでもいい話題に熱中していた。
帰ってもいいだろうかと真剣に思うルイズに、ようやく声が掛かったのは更に15分程経過してからである。
尻の話が終結したのか、もしくは話を逸らしたいのか、オールド・オスマンが第一発見者に事情を聞こうとしたのだ。
それが本題なのにここまで放置されていたのよね、とルイズはうんざりする気持ちを抑えつつ昨夜目撃した事を話し始める。
途中、クロコダインやレイナールが補足しながら話し終えるのに10分かかった。
ちなみに宝物庫の壁を破壊したのはフーケのゴーレムという事になっている。正直に失敗魔法でふっ飛ばしましたと言っても信じては貰えなかっただろうが。


241 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/20(土) 23:47:13 ID:aaf9zizy
話を聞き終えた学院長は思わず頭を抱えていた。
フーケの後を追おうにも、手掛かりが全く無いからである。
せめて逃げた方角だけでも確認したかったのだが、フーケの作った鉄製のドームの所為で視界が塞がれていた為、それもかなわなかった。
王室には届け出たくないんじゃよなー、だって色々うるさいしぃ、と教育者らしくない事を考えているオスマンである。
これからどうするべきか、正直手詰まりなんじゃないかという空気を一変させたのは、今まで姿を見せていなかったミス・ロングビルだった。
なんと彼女は昨夜の戦いを自室から目撃し、逃げていくフーケの姿を確認したというのである。
慎重に後を追った彼女はフーケに追いつけはしなかったものの、かの怪盗が潜伏していると思われる小屋の在り処まで突き止めていた。
正に三面六臂の大活躍であり、学院の責任者から見れば女神に等しい仕事振りである。
「では王室に報告して早く兵を差し向けてもらいましょう!」
そんなコルベールの発言をオスマンは一蹴した。
今から報告をしていてはフーケに逃げられてしまうだろうし、そもそもこれは学院の問題なのだから解決するのも学院の人間でなくてはならないというのである。
教師達の中には「それってただの保身じゃないのか」と思う者もいたのだが、賢明にも口には出さなかった。
さて、こうなると問題は誰がフーケを捕えて秘宝を取り戻すかである。
今までどんな厳重な警備や優秀な追跡者を出し抜いてきた怪盗を捕縛したとあれば相当な名誉だ。
だが最低でもトライアングルクラス、もしかしたらスクエアの可能性もあるメイジを相手にするとなるとかなりの危険を伴う。
名誉と危険を天秤に掛けた結果として、捜索隊に名乗りを上げる教師はただの1人も存在しなかった。
普段は己の系統を自慢し、実際にスクエアの実力を誇るギトーですら俯いたまま杖を掲げる気配はない。
「どうした? フーケを捕えて名を上げようという貴族はおらんのか!?」
オスマンが挑発に限りなく近い檄を飛ばすが、教師達は顔を見合せるだけで動こうとはしなかった。
そんな時が止まったような重苦しい空気の中、ただ一人動いた者がいる。
凛とした表情で杖を掲げたのはルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール、通称『ゼロ』のルイズであった。


243 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/20(土) 23:50:14 ID:aaf9zizy
当然の如く大騒ぎになった。
学生が、それも始祖の血に連なる国内でもトップクラスの大貴族の娘が盗賊退治に乗り出すと言い出したのだから、大騒ぎになるのは当然と言えるが。
これまで発言の無かった教師達が口を揃えて危険だ、まだ学生なのに、教師達に任しておけという声が飛ぶがルイズは意に介さない。
まだ学生なのも危険である事も充分判っているが、それを踏まえた上で行かなければならない理由が彼女にはあるのだ。
大体捜索隊に立候補もしないのに教師に任せろと言われても何を任せればいいのか困るので、その旨を指摘したところ相手は黙ってしまった。
ルイズは思う。黙られても困るものだなあ、と。
困っていたら、ルイズの隣の席で寝ていた筈のキュルケがいつの間にか杖を掲げていて、ますます騒ぎが大きくなった。
参加動機が「ヴァリエールが行くのにツェルプストーが行かない訳にはいかない」というのは単に張り合ってるのか、それとも違う理由があるのか。
もっとも表情はつまらなさそうにしていて、明らかにルイズが立候補しなければ寝て過ごしていたのだろうと言う事が判る。
更に読んでいた本を閉じながらタバサが無表情のまま杖を掲げた為、宝物庫の中はますます騒がしさを増した。
ただ一言「心配」とだけ口にした彼女をキュルケは抱きしめ、ルイズはぎこちなく礼を言い、鼾をかいていた筈のマリコルヌは何故かその光景を見てハァハァ言い始めたが皆で無視する。
一部の教師はそれでも彼女たちを止めようとしたが、それを遮ったのはオールド・オスマンだった。
いわく、タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士であり、キュルケは優秀な軍人を多く輩出した家系の出で自身の魔法も強力であると。
そしてルイズの名を上げて、一瞬詰まり、誤魔化すように周囲に目をやって、ほらあんなに強そうな使い魔を召喚しているし的な事を威厳たっぷりの口調で言った。
ルイズとクロコダインのじっとりとした視線を、齢三百歳とも言われる偉大なメイジは華麗にスルー。結果として威厳は落ちているのに彼はまだ気づいていない。
実はオスマンは、ルイズの使い魔に刻まれたルーンの意味を確かめるのにちょうどいい機会ではないかと、そんな事を考えていたのだ。
もちろん、万が一の事を考えてある種の『保険』を掛けるつもりでもあったのだが。
そんな内心はおくびにも出さず、オスマンはルイズ達に向きなおって言った。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
「杖にかけて!」
3人が真顔で唱和すると、オスマンはロングビルに馬車の準備と道案内をするように命じた。快く了承したロングビルが宝物庫を後にする。
「わたしたちもちょっと着替えてこない?」
ロングビルの背中を見ながらそう主張したのはキュルケで、タバサもその意見に無言で同意した。確かに今の彼女達は学院の制服姿であり、フーケ捜索に相応しい格好とは言い難い。
ルイズとしても反対する理由はないので自室に戻ろうとしたが、クロコダインがその場を動こうとしないのに疑問を抱いた。
「どうしたの? クロコダイン」
ひょっとして勝手に捜索隊に志願したのを怒っているのだろうかと思ったが、どうもそうでは無い様で、彼はルイズを見るとこう言った。
「いや、オレには何が盗まれたのかサッパリわからんからな、お前達が着替えている間に詳しい事を聞いておこうと思ったのさ」
「あれ? クロコダイン、ひょっとして字が読めなかったの……?」
ルイズは壁に書かれたフーケの署名を視界の隅に入れながら質問した。
今まで問題なく会話が出来ていた為、文字に関してはこれまで全く気にしていなかったのだ。
「ああ、少なくともそこの壁に書かれている分は読めないな。オレの居た所の文字とは異なっているようだ」
クロコダインはそう言うと、ポンとルイズの頭を軽く叩いた。
「さあ、言いたい事は色々あるが時間が無い。早く着替えてきてくれ」


245 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/20(土) 23:53:08 ID:aaf9zizy
ミス・ロングビル、すなわち土くれのフーケは、厩舎に向かいながら心の中で始祖を呪っていた。
(ああもう、なんだって学生なんかが引っ掛かってくるんだい!)
それもその筈、フーケの立てた目算は完膚なきまでに崩壊しているのだ。
彼女の予想は教師達が捜索隊に手を上げない所までは当たっていた。
幾らメイジとしてのレベルが高くとも彼らは所詮教師に過ぎず、何か特殊な訓練を受けている訳でもない。そんな人間は決して危険に飛び込むような真似はしない。
だがそんな中でも、生徒思いのコルベールや責任者であるオスマンなどは、最終的に自分が行くと言い出すとフーケは思っていた。
この2人ならマジックアイテムの使用方法を知っている可能性は高く、また自分に手を出そうとしているのが丸わかりなので適当にあしらいつつ情報を入手する自信もあった。
ところが蓋を開けてみれば、捜索隊のメンツは明らかにアイテムの情報など持っていない学生3人である。
(あー、やっぱクニに帰っときゃ良かったかなー……)
現在のフーケ、うしろむき48%。
しかし、いや待て、と彼女は思いなおす。
諦めるのはまだ早い。確かに今回は予想が外れたが、それなら予想が当たる様に計画を立て直せばいいだけの事だ。
フーケは限られた時間の中でいかに行動するか、急いで考えを巡らせ始める。
現在のフーケ、前むき67%。
もっとも、彼女のモチベーションは厩舎においてうしろむき100%に限りなく近付く事になるのだが。

247 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/09/20(土) 23:55:27 ID:aaf9zizy
着替えが終わり、厩舎を訪れたルイズ達が見たのは、2台の馬車であった。
1台は自分達が使う分だとして、では何故もう1台準備されているのか。少なくともクロコダインは馬車に乗る事は出来ない。
ひどくどんよりとした表情のロングビルに尋ねようとして、ルイズは馬車の周りに四つの人影を見た。
「やあ、遅かったじゃないか君たち!」
ロングビルとは対照的に、ひどく爽やかな笑顔でギーシュは手を上げる。
「……なにやってんの、あんたたち」
「見て判らないかい?」
ギーシュの後ろでは、ギムリとレイナール、マリコルヌが馬車に馬を繋いでいた。
「まさか一緒に行くなんて言い出すんじゃないでしょうね」
「まさか! 僕達にそんな度胸があると思っているのかい?」
聞き様によってはえらく情けない事を造花のバラを咥えつつのたまうギーシュに、ルイズは半目で質問した。
「じゃあなんで馬車なんて用意してるのよ」
「決まってるじゃないか! もちろんこれから森にピクニックに向かうからさ!」
「…………は?」
あまりと言えばあまりの言葉に、ルイズだけではなくキュルケやタバサまで呆然とする。
当のギーシュはそんな様子など意にも介さず言葉を続けた。
「だってこんなにも天気が良いんだよ? とても授業なんて出てる場合じゃないね、親しい仲間と一緒に遊びに行くべきだと僕の中の始祖がそう仰ったのさ!」
始祖も6000年後にこんな愉快な言い草の種になろうとは思いもしなかっただろう。
「……まあ前半だけは同意してもいいけど、男4人でピクニック? 淋しいにも程があるわね」
まだ呆然としているルイズの横からキュルケが突っ込むと、ギーシュは大仰に肩をすくめてみせた。
「ま、たまには男同士の友情を深めるのもいいと思ってね。正直女の子との遠乗りはもう懲りたよ。毎回野郎ばっかりなのは御免だけど」
「それは生まれてこのかたオンナノコと出かけた事の無い僕に対する挑戦? 死ぬの? ねえ、死ぬの?」
「落ち着けマリコルヌ! 早まるんじゃない!」
馬車の後ろからそんなやり取りが聞こえてきたが、友情を深める為に敢えて無視する。
「つまりそういう事さ。まだどこに向かうかは決めていないから、偶然君たちと同じ方向に向かう事があるかもしれないが、あくまでそれは偶然だからそのつもりで」
悪びれる様子もないギーシュに、ルイズは一応警告した。
「はっきり言っておくけど、これってかなり危険な事よ。ついてくれば最悪の場合命に関わるし、学院からもいい顔はされないわ」
「ただのピクニックなのに?」
ギーシュはピクニックに行くという主張がよほど気に入ったようだった。
「まああそこで僕たちまで捜索隊に立候補していたら流石に止められていただろうからね、世の中には体裁という物も必要という事さ。あ、これはただの独り言だけど」
「寝た振りしながら風の魔法でこっそり内緒話をしていたなんて事実はないしな。言っとくがこれも独り言だ」
馬車の準備を終えたレイナールとギムリが、独り言とはとても思えない独り言を言う。
つまるところ、彼らはどうしようもなく貴族だと言う事に、ルイズは気付かざるを得なかった。
「ピクニックなら仕方ないな。ちゃんと弁当は持ったのか?」
それまでシルフィード、フレイムと一緒にいたクロコダインがニヤリと笑いながら言うと、マリコルヌが籐のバスケットを掲げる。
「食堂に無理を言って作って貰ったよ。パンに適当な具材を挟んだだけらしいけどね」
「つまり、準備も覚悟も出来ているという事だ。ルイズよ、お前達と同じ様にな」
クロコダインは真剣な眼でルイズを見た。
「ルイズ、お前に並々ならぬ覚悟があるのは判る。だが、前にオレが言った事は忘れてくれるなよ」
「────大丈夫。ちゃんと覚えてるわ」
それは数日前の訓練後に交わした言葉。戦う目的、撤退という選択、そして誇りの意味。
「貴族としての誇りと義務を、わたしは貫くわ」
「ならばオレは主を守ろう。使い魔として、武人としてな」
2人は杖と戦斧を掲げ、互いに笑みを浮かべるのだった。


548 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/10/31(金) 12:45:09 ID:s5D40uGp
虚無と獣王
15  捜索隊と獣王

森の中を二台の幌の無い馬車が行く。
一台はロングビルが御者を務め、ルイズ・キュルケ・タバサが乗るフーケ捜索隊のものだ。
先頭を切るルイズ達はロングビルに話しかけたり、奇襲が無いか周囲に気を配っていた。
「ねえ、フーケの奴、まだこの国にいると思う?」
そんなキュルケの問いにルイズとタバサは揃って「もういない」と答える。
「今までの貴族狙いならともかく、魔法学院の宝物庫を破ったんだもの。トリステインでこれ以上の標的は王宮しかないし、流石にフーケもお城の宝物庫には盗みに入らないでしょ。となれば後は国外に逃亡するしかないわ」
「同意。もうこの国にいる理由はない」
級友2人の意見にキュルケは頷き、しかし疑問を口にする。
「まあ私もそうは思うんだけどね。でもミス・ロングビルの証言を考えるとまだこの国に用があると考えられない?」
確かにロングビルは『フーケの潜伏先を突き止めた』と言っている訳で、それはすなわちかの怪盗は国外に出る意思がないとも解釈できる。
「でも捕まったら多分極刑よ? 自分の命より優先する用事なんてあるのかしら」
「そう言われればそうなんだけどね、なんか妙に引っかかるのよ」
首を傾げる2人に、タバサがボソッと呟いた。
「取扱説明書を盗み忘れた」
一拍の間をおいて、ルイズとキュルケは揃って笑い出してしまった。
「あはははは! と、取説! 無い、いくらなんでも流石にそれは無いでしょ!」
「い、いや、判んないわよ? 盗んだはいいけど上手く使えなくて途方にくれてたりとかってゴメン! 自分で言っててムリがあるわー!」
もともとスプーンが転がっただけで笑ってしまえるような年頃の彼女たちである。ツボに嵌ってしまったのか目に涙まで浮かべていた。
言い出したタバサまでもが、本で巧みに口元を隠してはいたが確かに笑みを噛み殺している。
だから、この明らかな冗談が実は真実であるという事に、彼女たちは当然気がついてはいなかった。

ロングビル/フーケはこれからの行動について思いを馳せていた。
正直、厩舎で男子学生どもの寝言を聞いた時はうっかり鬱に突入しそうになったが、そこは義妹の顔と胸を思い出す事でなんとか持ち直した。
胸に関しては、タイミングを間違えると逆に鬱が進行しかねない危険な賭けだったのだが、今回は上手くいったようだ。
学生達がマジックアイテムの情報を持っていない以上、オスマンかコルベールをなんとかおびき出さなければならない訳だが、では具体的にどうすればいいのか。
一番確実なのは学生の誰か、もしくは全員を人質にとって、教師達が出てこざるを得ない状況を作り出す事だ。
命まで奪うような事はしたくない。それは彼女の流儀に反する事であったし、大貴族の子女が捜索隊の中には含まれる為、不必要な恨みを買う危険は避ける意味もある
さて、この学生たちを無力化するにはどうしたらいいだろうか?
後ろの荷台でなぜか爆笑しているルイズとキュルケの声をどこか遠くに感じながら、フーケは作戦を練り始めるのだった。


549 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/10/31(金) 12:48:06 ID:s5D40uGp
二台目の馬車に乗るギーシュ達は、若者らしく熱い議論を真剣に交わしていた。
事の発端は、周囲を警戒していたマリコルヌが何故か遠い眼をしながらため息をついた所から始まる。
「どうしたんだいマリコルヌ。体調でも悪いのか?」
「ん、ああいやそうじゃないよ。ちょっと考え事をしていたんだ」
レイナールの問いに、どことなくアンニュイな風情を無意味に漂わせながらマリコルヌは答えた。
「僕達は今ピクニックと称して森の中へ向かっている訳だけど、どうせならもっと違う場所に行きたいなぁって、ね」
「なんか碌な答えが返ってきそうにない気がするけど一応聞くよ。どこに行きたいと?」
「おっぱい王国(キングダム)」
一瞬の躊躇いもなく即答する小太りの同級生を見て、レイナールは思う。
聞いた僕が馬鹿だった、と。
予想外の、ある意味では予想通りの答えにギムリは荷台から落ちそうになっている。
そして、御者台のギーシュは大真面目な顔で同級生にこう問い質した。
「すまない。よく聞こえなかったんだがもう一度言ってくれ給えよマリコルヌ」
「ああ、こちらこそ小さな声ですまなかったねギーシュ。いいかい、僕がイキたいのは、お・っ・ぱ・い・王・国だよ」
マリコルヌが丁寧に一音一音区切りながら大声で返事をするのとほぼ同時に、レイナールとギムリが大慌てで馬車の周囲に『静寂』の魔法を掛ける。
前を走る馬車に小太りの大声が届いていない事を確認し、2人は安堵の息を漏らした。
あんな発言が知れ渡った日には、それこそ学院内での居場所が無くなってしまう。自分が言った事ではないとはいえ、仲間と認定されただけで悲惨な青春を送る事になるのは目に見えていた。
もしくは学院に帰り着く前に速やかに抹殺される。犯人は当然同行者の女性陣だ。
ギーシュはそんな危惧など露ほども知らぬ様子でマリコルヌに話しかけた。
「素晴らしい、素晴らしいよマリコルヌ! 確かにそんな楽園があるなら僕もイッてみたいものだね! 一体どんな国なのか学術的な興味が湧いて仕方がないから端的に教えてくれなさい」
「ハハハ端的になんて言えないよギーシュ。まあ、敢えて言うなら、すべからく大きくて、なおかつ包み隠す事のない国さ」
おいおい端的にも程があるだろ、というギムリのツッコミは馬鹿2人の耳には残念ながら届かない。
「ちょっと待ってくれ、包み隠さないというのは確かに素晴らしくてとても素晴らしい事だが、すべからく大きいとはどういう意味なんだい!?」
次第に熱がこもるギーシュの質問に、マリコルヌは至極当然と言った顔で答えた。
「おや、判らないのかいギーシュ? 小さいという概念がその国にはないのさ。これもまた端的には表現できないけど、つまりメロンしか存在しないと、要はそう言う事だね」
端的に言って同じ男からしても君たちドン引きなんだけどな、というレイナールの感慨も、やはり馬鹿2人の耳には届かない。


550 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/10/31(金) 12:51:46 ID:s5D40uGp
「いいや違うな! 間違っているぞマリコルヌ!!」
やけにオーバーなリアクションで、ギーシュはマリコルヌの主張を力強く否定した。
「いいかマリコルヌ。女性の胸というものは確かに母性の象徴であり、ボクたちに熱くナニかを訴えかけてくるとてもキケンでひどく甘い畏敬すべきシンボリックな存在だ。
だが! 矢鱈めったら大きい胸の持ち主だけをひたすら持て囃すという昨今の風潮は全くもっていただけないと、ボカァそう思うね!!」
もはや御者そっちのけで熱弁を振るうギーシュに、しかし同級生の対応は厳しかった。
「とかなんとか言いながら、お前ツェルプストーと話すとき絶対谷間に目がいってるだろ、ギーシュ」
「いきなり客観的な事実を突きつけてやるなよギムリ。モンモランシや一年のあの娘は何と言うか、こう、控え目サイズだったろう? 人にはそれぞれ立場とか建前とかがあるものなんだよ」
「うわ保身かよ。いいじゃないか、別に巨乳派は必ず巨乳と交際しなければならないって法があるわけじゃないし。あとさりげに相手の内面を抉ってないかレイナール」
「いやあそれほどでも」
「褒めてないし」
ツッコミを入れつつ徐々に話をずらそうとするレイナールとギムリの努力を踏み潰すかのように、マリコルヌはギーシュの熱弁に負けない勢いで反論した。
「間違っているのは君の方だろう、ギーシュ! おっぱい王国を崇めたてまつる風の妖精さんとして全員メロンちゃんなのは既定事実でありこれっぽっちも譲れないね!!」
「なあ、今、風の妖精って言ったか……?」
「いや、どちらかというとちゃん付けの果物の方が気になるんだけども」
あまりに熱くなり過ぎている議論組とは対照的に、冷静にならざるを得ないツッコミ担当の2人である。
「何を言い出すかと思えば、全くなっちゃいないね!! 大きいも小さいもない! 胸という物はサイズに関わらず全てが尊いものなのだと言う事がどうして理解できないんだマリコルヌ!!」
「選別という残酷なルールがあるからこそ美(おっぱい)という物は光り輝くものじゃないか! 君も名のある貴族の出だと言うのに、そんな基本も理解できないとは失望したよギーシュ!!」
ただひたすらヒートアップしていく世にも下らない、しかしそれ故に熱い議論を前にレイナールとギムリは思う。
一体どんな魔法をぶつければこの馬鹿たちは黙ってくれるものだろうか、と。

そして、そんな二台の馬車を見下ろしている者達がいた。
雲ひとつない空の下、一匹の風竜がゆっくりと飛ぶ。彼女はその前足で鰐顔の獣人の肩を掴んでおり、背には虎ほどの大きさのサラマンダーを乗せていた。
「すまんなシルフィード。辛いようならすぐに言ってくれ」
幾分すまなさそうな口調のクロコダインに、シルフィードは明るい口調で応える。
「これぐらい全然大丈夫なのねー! むしろ背中の赤いのの方が重いのね」
「ちょっと待て、聞き捨てならんぞ青いの!」
3メイルの巨体を馬車に乗せる訳にはいかなかった為、出発前にルイズはタバサに頼んでシルフィードを同行させて貰っていたのだ。
クロコダインが一緒に行けないとなると戦力が明らかに落ちるのは自明であり、タバサも特に異論はなかった。
そうなるとキュルケも自分の使い魔を連れて行きたくなり、かくしてハルケギニアの空を3匹の使い魔が飛ぶ事となったのである。
なお、ギーシュ達の使い魔は同行していない。流石に大所帯になり過ぎるだろというセルフツッコミをする理性が、彼らの中にも存在していた。


551 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/10/31(金) 12:54:35 ID:s5D40uGp
結局目的地に着くまで笑い続けていた1台目と、決闘騒ぎに発展しつつあった2台目の馬車は、道中襲われる事もなくアジトと思われる場所に辿り着く事が出来た。
全く緊張感に欠ける彼らであったが何とか平静を取り戻し、フーケの隠れ家ではないかとされている小屋から少し離れた場所で身を潜める。
クロコダインとフレイムは主たちと合流し、シルフィードはそのまま上空で警戒に当たる。
風魔法の使い手であるマリコルヌが『遠見』の魔法で小屋の周辺を偵察するものの、人影は見当たらないが小屋の中の様子までは判らない為、誰かが直に見に行く必要があった。
車座になって作戦を練る一同の中で、
「私が行くわ」
とルイズが偵察に名乗りをあげたのには理由がある。
フーケの捜索に参加した者の中で、自分が一番『使い勝手が悪い』と、そう考えていたからだ。
系統魔法は全て爆発に変換され、かと言って自慢できるほどの体力もない。戦闘の経験がないのも問題で、まだしも決闘騒ぎを何度か起こしているギーシュの方が場数を踏んでいると言える。
昨夜は爆発魔法でゴーレムの腕を吹っ飛ばすことが出来たが、正直なところ狙った場所に魔法を当てる自信はない。
以前の自分ならこんなことは考えるのも嫌だったが、召喚魔法の成功と使い魔の励まし、そしてここ何日かの『監督業』のお陰か、ルイズはある程度自分の現状を客観視できていた。
フーケが小屋に居るのか判らないが、もし居たとしても小柄な自分ならば見つかる可能性は低いのではないかと考えてもいる。
ところが。
「ここはオレが行こう」
自分の使い魔にあっさり意見をスルーされた。
「ちょ、ちょっとクロコダイン! 人の話聞いてたの!?」
顔を真っ赤にして抗議するルイズに、クロコダインは噛んで含めるように言った。
「なあルイズよ。出発前にオレは『主を守る』と誓ったんだが覚えているか?」
「まあねー、ここで主を偵察に突っ込ませる使い魔は普通いないと思うわー」
「経験不足は否めない」
いちいち正論を口にされ、すぐには反論できない。
発言者がギーシュたちであったならば言い返していたかもしれないが、トライアングルメイジ2人と無類に強い自分の使い魔が(一部素直でない表現を用いながらも)ルイズの事を心配して言っているのを察してしまった以上、ここは無理にでも納得するしかないようだった。

相談の結果、アジトへ向かうのはクロコダインとフレイムということになった。
小屋の中にフーケがいた場合、クロコダインは怪盗を外へとおびき出し、その間にフレイムと視界を同調させたキュルケが盗まれたマジックアイテムを捜索、残りの面子はクロコダインと連携しながらフーケを捕縛する。
小屋にフーケがいない場合は、何らかの痕跡が残っていないか調べ、追跡を続行するか一旦学院に戻るか検討する。
大雑把にそんな作戦を立てて、ルイズたちはクロコダインとフレイムを見送った。


552 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/10/31(金) 12:57:29 ID:s5D40uGp
小屋の窓の無い側から、その巨体からは想像つかない程の素早さで接近するのが見える。
窓から中を覗き込んだクロコダインが少しの間を置いて傍らのフレイムに小声で何事か話しかると、使い魔と感覚を繋げていたキュルケがその声を聞き取った。
「中には誰もいないみたいよ? ただ罠が仕掛けられていないかクロコダインは心配してるけど」
危険が無い事にほっと安堵の息をついたルイズは、緩んだ空気を引き締めるように気合いを入れ直す。
「タバサ、罠が無いか確認したいから一緒に来て。キュルケとミス・ロングビルは男子たちと周囲の警戒をお願い。何かあったらフレイムを通して連絡するわ」
「わかりましたわ」
「ま、いいでしょ。タバサ、その跳ねっかえりをよろしくね?」
「ん」
「誰が跳ねっかえりよ!」
真剣な表情で動きだした女性陣を見ながら、ギーシュは造花のバラを構えながらポツリと呟いた。
「なんか微妙にシリアスな空気になってるけど、ここらへんでなんか面白い事を言った方がいいかと思わないか?」
傍で聞いていた仲間たちは、
「マリコルヌ、君は風メイジだったよな? こいつにエア・リーディングの魔法をかけてやってくれよ」
「ギーシュに空気を読ませるのはスクエアクラスでも無理だよ。そんな無駄な精神力を使うくらいなら僕はメロンちゃん創造計画を進行させるね!」
「君も空気読めないのはよくわかったからちょっと黙っててくれ頼む。僕たちの青春の為にも」
本人たちは至って真剣だが第三者から見れば面白いかもしれない事を言って、女性陣からじっとりと白い目で見られたのだった。

扉にトラップが仕掛けられていないのを確認して、ルイズたちは小屋の中に入った。
埃の積もった床、部屋の中央の机の上の飲み捨てられたと思しき古い酒瓶、崩れた暖炉、部屋の隅のチェストを見回してタバサは緊張の度合いを増した。
中を覗き込んだクロコダインも顔を顰めてルイズに指示を出す。
「ルイズ、フレイムに周囲の警戒を強めるよう言ってくれ。襲撃があるかも知れん」
「え、ちょっとどうしたの2人とも」
わたわたと2人の顔を交互に見渡すルイズに、杖を構えなおしたタバサが言う。
「この小屋は明らかに使われていない。フーケがここをアジトにしていたとは思えない」
「じゃあ、この小屋がアジトって情報自体が罠ってこと!?」
ルイズの言葉と同時にフレイムが低く唸り声を上げる。外にいるキュルケがなにか警告を送ってきているのだ。
「────2人とも外に出ろ。お出ましだ」
扉の前で臨戦態勢に入るクロコダインの隻眼に、昨夜対峙した30メイルのゴーレムが捉えられていた。


747 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 12:25:11 ID:hTlCpZIv
埋めついでに嘘予告篇を投下


その日、少女が召喚したのは、友達だった。

『フレンド』

幼き日、池の畔でなく少女にもたらされた奇跡。
それは、黄金色に輝く愛らしい瞳の小動物らしき謎のナマモノだった。
少女は友達に名前を上げた。
「ゴメちゃん」
ゴールデンでメタルっぽいからゴメ。皆が少女のネーミングセンスに恐怖した。

最初は得体が知れないと娘の身を案じた父親だったが、2人が無邪気に遊ぶ姿を見て警戒を解いた。
ついでにお抱えの絵師に20枚にもわたる連作を描かせて妻に怒られた。

自分にも他人にも厳しい母親だったが、誰も周囲にいない時には娘の友達を抱きかかえてゴロゴロと転がった。
「烈風」の二つ名を持つ彼女は、可愛いものに滅法弱かった。

時がたち、少女は魔法学院に入学する事になった。
全寮制の為、生き物は持ち込めない。
彼女の家の実力をもってすれば特例を認めてもらえただろうが、彼女はそれを断った。
少女は貴族の証たる魔法を成功させる事が出来ない。だからこそ、彼女は貴族の範となる事を誓っていた。


748 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 12:27:09 ID:hTlCpZIv
そして、召喚の日。扉をくぐってきたのは、実家に残した筈の友達だった。
友を使い魔にしていいのか。
躊躇する少女に友達は笑いかける。その笑顔を見て、少女も笑みを返した。
そうだ。例え何があっても、わたしたちは友達だ。

こうして2人は主と使い魔になった。

それからは色んな事があった。

愛らしい友達は、たちまち皆の人気者になる。
少女が同級生と決闘騒ぎを起こした時、友達は少女を守る為に広場に登場した。
その姿を見て同級生はあっさりと負けを認めた。
「いや無理だから! あんなちみっちゃいナマモノ攻撃するのムリだから!」
鼻血を出して言う事ではない、と少女は思った。

怪盗が宝物庫から宝を盗み出した。だがそれは囮。怪盗は何者かに依頼されゴメちゃんを攫おうとしていたのだ。
誘い出された少女たちに襲いかかるガーゴイル。だが土壇場で怪盗は少女に味方した。
「あんな可愛いナマモノを狙えるわけがないだろ! さっさと逃げな!」

幼馴染の姫の依頼で、婚約者と共に空飛ぶ城に向かう少女。
戦争の悲しさと王子の誇り、涙を流す少女に再び刺客が襲いかかった。
ガーゴイルの攻撃を、婚約者と王子が撥ね返す。
「ルイズの友達は僕の友でもある! お引き取り願おう!」
「おのれレコンキスタめ! こんな愛らしいナマモノを襲うとは人として許せん!」
「うわあ気が合うなあ王子! でもゴメちゃんは渡せないけど!」
「いやそもそも君のものでもないだろ子爵!」
少女は頭を抱えた。大丈夫かこの変態紳士たちは。

 
749 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 12:29:26 ID:hTlCpZIv
遠くガリアの王宮で、狂える王は命令する。
「余のミューズよ。一刻も早く彼の使い魔をここへ連れてくるのだ。
あのプニプニした体を想像するだけで心が震えるわ! 当社比シャルルの三倍くらい!」

命を下された女は思う。
ついうっかり捕獲に失敗してヤっちゃっても私悪くないよね、と。
てか私よりあんなナマモノのほうが上なんかい。

そして、燃え盛るタルブの村と空を覆う戦艦を前に、少女は叫ぶ。
己の系統たる虚無の呪文と、そして自分を支え続けてくれた友達の名を。


ダイの大冒険からゴメちゃん召喚。
近日未公開!


スイマセンスイマセン。本編が進んでいないのにスイマセン。
パソコンさま絶不調で修理に出しますので今年中に次の投下が出来るか分かりません。
ではまた。


246 名前: 萌えっ娘。名無しさん 投稿日:2009年08月28日 14:12
相変わらず文才すげぇなこの作者


コメントいっぱい書き込んで










管理者にだけ表示を許可する



● みことちゃん を救う会からのお知らせ ●
御坂美琴
みことちゃんは生まれつき帯電体質で
一定期間毎にレールガンを発射しなければ、弱ってしまいます。

レールガンを発射させるには、本人以外の第三者からの
莫大な応援エネルギーがかかります 

みことちゃんを救うために
アニメランキングのクリックや
コメントの書き込みが必要です

どうか読者の皆様ご協力をよろしくお願いします