1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/10(月) 23:34:05.46 ID:EzluRyG1O
ホロ「え?」
ロレンス「ん?」
ホロ「ぬしは耳が悪かったかや?わっちゃあ…林檎が食べたいと言っておる」
ロレンス「そうか」
ホロ「……」
ロレンス「食べたいなら食べればいい。金は渡してるだろう」
ホロ「雌がねだるのを無下にするのかや?」
ロレンス「何がだ。食いたいなら食え。好きにすりゃ良いさ」
ホロ「ぐ…」
ロレンス「なんだ、食わないのか」
ホロ「……ふん。もういりんせん……」5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/10(月) 23:37:45.91 ID:EzluRyG1O
ホロ「……」
ロレンス「腹減ってたんじゃないのか。無理するなよ」
ホロ「……ふん。わっちゃあぬしがそんな小さい雄だとは思わんかった」
ロレンス「そりゃあ見当違いだな。俺は商人だ」
ホロ「今までは買ってくれたのにの」
ロレンス「俺が優しいから…だったか?」
ホロ「くふ、わかっとるじゃないかや。ならば早く…」
ロレンス「調子に乗るな」
ホロ「……え?」10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/10(月) 23:42:53.54 ID:EzluRyG1O
ロレンス「何を不思議そうな顔してるんだ?」
ホロ「ぬし…本気で言っとる訳ではあるまい?」
ロレンス「奢って貰うのが当然とでも言いたげだな」
ホロ「…当然とまでは言わん。言わんが…」
ロレンス「が?」
ホロ「……今まで買ってくれたのに……」
ロレンス「何度も言わせるな。俺は商人だ」
ホロ「ケチなのと計算高いのは違うじゃろ…?」
ロレンス「はぁ…こんな事まで言わせるな」
ホロ「な、なにをじゃ」
ロレンス「利益が見込めるなら喜んで投資する。お前はそれに見合わない。満足か?」
ホロ「な…なんじゃと……!」12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/10(月) 23:48:23.53 ID:EzluRyG1O
ホロ「…言い過ぎだと悔いるなら今じゃ。今なら許せる」
ロレンス「気に入らないなら頭から食えば良い。腹が減ってるんならちょうど良いだろう」
ホロ「……!ぬし…!」
ロレンス「望みのものが買ってもらえないから怒ったか。雌はどうやら人も獣も変わらんみたいだな」
ホロ「良い。わかった」
ロレンス「わかってもらえたなら何よりだ。さすが賢狼だな」
ホロ「……」
ロレンス「さて、宿だ。早いが晩飯にするか」
ホロ「……」14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/10(月) 23:52:31.07 ID:EzluRyG1O
ロレンス「おお、この肉は美味いな。安い割に量も質も申し分ない」もぐもぐ
ホロ「……」
ロレンス「どうした?食べないのか?」
ホロ「……」
ロレンス「腹が減ってたんだろ?」
ホロ「わっちゃあ…わっちゃあ賢狼ホロじゃ」
ロレンス「ああ、そうだな。知ってる」もぐもぐ
ホロ「…こんな…こんな家畜のような扱い…!!」
ロレンス「……まだ贅沢言ってるのか。パン一切れでもタダじゃないんだ。嫌なら俺が食ってやろうか」19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/10(月) 23:59:02.56 ID:EzluRyG1O
ロレンス「ぶどう酒によく合う…うん、うまい」
ホロ「……」わなわな
ロレンス「いらないみたいだな。もらうぞ」ひょい
ホロ「あっ」
ロレンス「…うん、美味い」
ホロ「………」
ロレンス「すみませーん。ぶどう酒をもう一杯いただけますか?」
店主「あいよ。おや?相方は飲まないのかい?」
ホロ「あ、わ、わっちも…」
ロレンス「ああ、結構ですよ。こいつ、実は酒に弱いのでね」22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:01:24.39 ID:O0ym7W2KO
店主「なんだぁ?人生損してるぞ嬢ちゃん」
ホロ「…」
ロレンス「ははっ、まったくです」
ホロ「わっちも!!」
店主「んん?」
ホロ「わっちも酒くらい飲める!親父、酒じゃ!」
店主「ははは、そうかい。無理するんじゃねえぞ?ほらよっ」
ホロ「侮るでない。わっちゃあそこいらの男にも負けん」
店主「まぁ、相方が居るし大丈夫か。潰れても運んでくれそうだ。ごゆっくる」
ホロ「……ふん」ちび…
ロレンス「……」じーっ
ホロ「………」
ロレンス「…………美味いか?」
ホロ「む?」24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:03:25.27 ID:O0ym7W2KO
ごゆっくり、ね
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:08:06.74 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「どうだ、美味いか」
ホロ「ふん。気分が悪い時に美味く感じる程の酒がぬしの財布で賄えるとは思えんの」
ロレンス「…ほう。たいした身分だな」
ホロ「晩飯もろくに食べさせてもらえんからの。酒でも飲まんとやってられん」
ロレンス「他人の財布で物を食って文句か…。さすが神様は違う」
ホロ「!」
ロレンス「懐の痛まない食事はさぞ美味いだろうな。羨ましいもんだ」
ホロ「わっちは神などでは…。何故今更そんな事を口にするんじゃ…」
ロレンス「理由が聞きたいのか?」
ホロ「……」ふるふる
ロレンス「賢明だな。まぁ、俺の心は筒抜けなんだろうが」31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:11:30.66 ID:O0ym7W2KO
ホロ「…」がたっ
ロレンス「どうした食事中に。マナーから教えなきゃいけないのか」
ホロ「…部屋に戻っとる」
ロレンス「そうか。ああ、部屋は別に取ってあるから間違えるなよ」
ホロ「……なに?」
ロレンス「その耳で聞こえない筈がないだろう。部屋は別々だ」
ホロ「…そうか。よくわかった」
ロレンス「ああ、おやすみ」
ホロ「…ふんっ!」32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:15:07.90 ID:O0ym7W2KO
・
・
・
ロレンス「…ふぅ。少し食い過ぎたかな」
ロレンス「明日の準備をしておくか」
ロレンス「明日は…と」
コンコン
ロレンス「…開いてるぞ」
ガチャ
キィィィ…
ホロ「…ぬしよ」
ロレンス「部屋は別々だと言った筈だが?どうした、腹が減ったか」
ホロ「……」
ロレンス「黙ってちゃわからん。なんだ?」
ホロ「ぬしよ……わっち……わっち、何か悪い事したかや…?」42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:29:04.26 ID:O0ym7W2KO
ホロ「もし…もし、わっちが何か気を損ねる事をしたなら謝る」
ロレンス「…」
ホロ「…ぬしよ…」
ロレンス「…」
ホロ「どうしたんじゃ?何があったんじゃ?なんで…」
ロレンス「…」
ホロ「なんでそんな…冷たくするんじゃ…」
ロレンス「また泣き真似か。良い加減慣れたら騙されはしない」
ホロ「な、泣いてなどおらん。…一体どうしてしまったんじゃ…」45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:32:56.97 ID:O0ym7W2KO
ホロ「何かあるんじゃろう?わっちがぬしを怒らせるような何か…」
ロレンス「別に怒ってなんかいないさ」
ホロ「嘘じゃ!なら、なんで…」
ロレンス「その耳は飾りか?機能しないなら本当に邪魔なだけだな」
ホロ「ぐ…」ぎり…
ロレンス「嘘を言っているかどうかくらいわかるだろう」
ホロ「…じゃが…じゃが、何故……何故そんな…」
ロレンス「はぁ、もう良いだろう。俺は眠いんだ」
ホロ「……」
ロレンス「ご退室願おう」
ホロ「わっちも…」47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:36:20.50 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「……なんだ」
ホロ「…わっちも、ここで寝る」
ロレンス「願い下げだな。はやく部屋に戻れ」
ホロ「……嫌じゃ」
ロレンス「子供以下だな。一人で寝るのも怖いのか」
ホロ「……」
ロレンス「なんだ?言いたい事があるなら言うと良い」
ホロ「………い」
ロレンス「うん?すまん、もう一回頼む」
ホロ「………怖い」
ロレンス「そうか。おやすみ」52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:43:13.69 ID:O0ym7W2KO
ホロ「……」
ロレンス「もう眠いんだ…疲れの原因の大半はお前なんだ。察してくれ」
ホロ「……わっちもここで寝る」
ロレンス「わがままも度が過ぎると愛嬌がなくなる。頼む、頼んでいる間に出て行ってくれないか」
ホロ「答えは聞いておらん。寄ってくりゃれ、わっちの寝る間がない」
ロレンス「…勝手にベッドに入るな。力は使いたくないんだ」
ホロ「嫌じゃ!わっちはここで寝るんじゃ……」
ロレンス「おい、ホロ。いい加減にしろ」
ホロ「………尻尾」
ロレンス「?」
ホロ「尻尾を、敷いて寝ても良い…良いから、わっちをここに置いてくりゃれ…」ぎゅ54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:47:02.58 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「わかった」
ホロ「!」ぱぁっ
ロレンス「お前がここで寝るなら俺が向こうの部屋に行こう」
ホロ「え…」
ロレンス「朝は起こしに来なくても大丈夫だな?」
ホロ「ちょ、ちょっと待ちんす。わっちを置いて行くのかや?本当に一人で寝ろと?」
ロレンス「ああ。あ、そうそう」
ホロ「……?」
ロレンス「財布、勝手に抜き取るなよ。…いや、やっぱり持って行こう」
ホロ「わっちがそんな事する訳ありんせん!!」63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 00:55:37.91 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「じゃあな。おやすみ」
ホロ「…待て」がしっ
ロレンス「なんだこの手は?離してくれ」
ホロ「嫌じゃ。ぬしが正気に戻るか、原因を教えてくれるまで…死んでも離しんせん」
ロレンス「おい…」
ホロ「嫌じゃ!離しんせん!」ぎゅっ
ロレンス「もう忘れたのか?俺はもうお前の手を叩きたくはないんだが」
ホロ「あ…」ぱっ
ロレンス「はは、安い命だな。質もお前を過大評価してたみたいだ。いや…」
ホロ「……」じわ
ロレンス「それだけエーブ・ボランの名前が効力を持つ、という事か。じゃあな、おやすみ」
バタン!
ホロ「……たわけ………」ぽろぽろ75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:01:19.69 ID:O0ym7W2KO
ホロ「わっちが……わっちが何をしたんじゃ……」ぽろぽろ
ホロ「……昨日まで…あ、あんなに優しかった…のに」
ホロ「卑怯じゃ…わっちが…ヒグ……離れられんのを…」
ホロ「あやつめは、わかっておる癖に……!」
ホロ「なんで……なんでこの歳で…小娘のように…ボロボロ泣かなきゃならんのじゃぁ……」
ホロ「…う……うっ……たわけめが………!」
ガチャ
ホロ「!」91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:09:10.10 ID:O0ym7W2KO
ホロ(帰って来てくれたのかや…!?)
ホロ「た、たわけ!!冗談が過ぎる!!」
ロレンス「?何を言ってるんだ」
ホロ「帰って来てくれたんじゃろう?昼間からずっとわっちをからかっておったんじゃな?」
ロレンス「…?」
ホロ「しかし…飯抜きはやり過ぎじゃ。相応の罰は覚悟しておろうな?」
ロレンス「なんだ…お前の荷物、いらないのか」
ホロ「え?」
ロレンス「持って来てやったのに礼もなし。これが賢狼の対応か」
ホロ「あっ…あり」
ドサッ
バタン!
ホロ「あり……がとう………」102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:15:03.10 ID:O0ym7W2KO
・
・
・
ホロ「…ん…んう…?」ぱち
ホロ「……朝……」
ホロ「……わっちとした事が………泣き疲れて寝てしまったかや」
ホロ「…あやつめは……もう起きてるんじゃろうか」
ごしごし
ホロ「何があったのかはわからんが、あやつがあそこまで冷たくするんじゃ…何か理由がある筈」
ホロ「…とりあえず、謝ろう。自尊心など、喧嘩の場では枷にしかならぬ」
ガチャ
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:19:33.20 ID:O0ym7W2KO
トテトテ
トテトテ
ホロ(何と言って謝るか…いや、果たして口を聞いてかや…)
ホロ(あそこまで変わるんじゃ。きっとわっちが何かしたに違いない)
ホロ(…とにかく、謝るしかなさそうじゃな)
コンコン
ホロ「わっちじゃ。起きておるかや?」
ホロ「…」
ホロ「まだ寝てるのかも知れんな。しかたない、わっちが起こしてやろう」
ガチャ
バタン
ホロ「………居ない」じわ…118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:25:44.03 ID:O0ym7W2KO
ホロ「本当に……居ないのかや?隠れておるんじゃろう?」
ホロ「わっちの前で隠れようなどと無理じゃ。わかっておろう?」
ホロ「…」
ホロ「なんて……耳に頼らずとも、この狭い部屋のどこに隠れると言うんじゃ」
ホロ「ロレンス……。わっちを捨てたのかや…?」
ホロ「……わっち……また……一人、じゃな」ぽろ…
ホロ「信じておった…信じておったんじゃぞ…?信じて……おったのにぃ……」ぽろぽろ
ホロ「……?」ぽろぽろ
ホロ「テーブルの上に……何か置いてある……?」
トテトテ
すっ
ホロ「ど………」
ホロ「銅貨…………」ぽろぽろ127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:28:56.14 ID:O0ym7W2KO
・
・
・
ホロ「なんでじゃ……なんで……」
ホロ「嫌じゃ…一人は嫌…」
ホロ「捨てないで……捨てないで……」
ホロ「……何したんじゃろう。あやつをあそこまで怒らせる事……」
ホロ「謝りたい……謝る……謝るから……」
ホロ「お願い……帰って来てくりゃれ………」146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:37:13.66 ID:O0ym7W2KO
ホロ「……」ぐしぐし
ホロ「…いかん。わっちゃあ…賢狼ホロじゃ」
ホロ「考えてしょげていてもしかたない。…居ないのなら探せば良い」
ホロ「案ずるより生むが易し。きっと街中におる筈じゃ」
ホロ「仮に街を出ていても、わっちの足ならば追いつける」
ホロ「…あやつの行きそうな所を徹底的に洗ってみるかや」
ガチャ
バタン160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:41:34.05 ID:O0ym7W2KO
がやがや
ホロ「…市場は賑やかじゃのう。露店もいっぱいじゃ」
ぐぅ…
ホロ「む…?そういえば、腹…減ったのう。昨日は夕飯を食べられなかったからの…」
ホロ「…むぅ。美味そうなりんごじゃな…」
ぐぅ…
ホロ「いかんいかん。露店の食べ物は…一緒に食べる者がいないと美味しくありんせん」
ホロ「……謝って、許してもらえたら……一緒に来よう」
トテトテ
トテトテ181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 01:49:04.49 ID:O0ym7W2KO
ホロ「……ここには居らんみたいじゃな。となると…」
ホロ「次に向かう先は…商会、かの」
トテトテ
トテトテ
ホロ「あ…この辺の露店、昨日一緒に回った…」
ホロ「あの料理美味かった…昨日は、あんなに優しい顔で買ってくれたのに」
ホロ「……あ。昨日あそこにあった露店がなくなっとるな」
ホロ「…人の気持ちも、こんなふうに変わりやすいもんなんじゃな…」
トテトテ
トテトテ297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 10:29:32.11 ID:O0ym7W2KO
ホロ「…」
ホロ「昨日あやつと食べ歩いた露店……」
ホロ「あのパン、美味かったのう。…ビールも、魚の揚げも…」
ホロ「……くふ、あの臭い食べ物だけは受け付けんかったが、あやつはためらいなく食べておった」
ホロ「もしかしたら、もう来る事がないのかも知れんな…」
ホロ「…いかんいかん。また弱気になっておるな。あやつと道連れてからわっちも腑抜けたようじゃ」
ホロ「……さぁ、着いた。手当たり次第尋ねるしかあるまいの」
コンコン299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 10:33:27.15 ID:O0ym7W2KO
小間使い「はい、どちら様でしょう?」
ホロ「突然申し訳ありんせん。わっちはホロと言いんす。実は旅の道連れが行方不明に…」
小間使い「それは大変だ。お連れ様のお名前は?」
ホロ「ロレンス。クラフト・ロレンスと言う行商人なのじゃが…」
小間使い「クラフト・ロレンス様ですね。確認して参ります」302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 10:37:35.30 ID:O0ym7W2KO
・
・
・
小間使い「申し訳ありません。クラフト・ロレンス様は我々の商会とは関わりがないようです」
ホロ「…そうかや。どうもありがとう」
小間使い「どういたしまして」
ホロ「礼といった礼が出来ず心苦しいのじゃが…」
小間使い「いえいえ。クラフトさんが戻られた時は是非ご一緒に起こし下さい」
ホロ「うむ。恩に着る…」
ホロ「…」
ホロ「…さぁ、次じゃ。手当たり次第探してみんとな」314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 10:42:04.69 ID:O0ym7W2KO
・
・
・
「申し訳ありませんが、我が商会とは…」
・
・
・
「知らないねぇ。一度取引したら忘れないから、多分来た事がないんだろうよ」
・
・
・
「なんだ嬢ちゃん?物乞いかい?悪いが施しはなしだ。こんな時世だからな」
・
・
・
「クラフト・ロレンス?知らないなぁ。それよりも嬢ちゃん、捨てられたならうちで働かないか?へへ、住み込みで雇うぜ?」
・
・318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 10:48:08.62 ID:O0ym7W2KO
ホロ「ふぅ…ふぅ…うっ」
ホロ「…マメが潰れてしまったかや…」
ホロ「疲れたのう……わっちゃあ疲れた…」
ホロ「昨日の夕飯からなんにも食べておらんのじゃから、当然と言えば当然か…」
ホロ「……」ぐぅ…
ホロ「……今朝置かれていた銅貨と、もともとの銅貨が少し…」
ホロ「パンならば…いくらか買えるかも知れんなぁ…」
ホロ「ロレンス……わっちゃあ淋しい……」
ホロ「帰って来てくりゃれ…?」
ホロ「…ん?あ……あれは……!!」324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 10:54:54.64 ID:O0ym7W2KO
タッタッタ
ホロ「ロレンスっ!」
ロレンス「…」
ホロ「探したんじゃぞ!一体どこに行っておったんじゃ!」
ロレンス「…」
ホロ「あ………違う、こんな事が言いたいんじゃありんせん。わっちは、謝りに来た」
ロレンス「…」
ホロ「……ぬしが、なんで怒っとるのか…ついにわからなんだ。じゃが、わっちゃあもう嫌じゃ…」
ロレンス「…」
ホロ「…冷たくされるのは…もう嫌なんじゃ…」
ホロ「……ごめんなさい。許してくりゃれ……?」
ロレンス「おい」
ホロ「!」びくっ
ロレンス「纏わり付くな」
ホロ「………………」
335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 11:02:36.77 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「お前は一体なんだ?金なら置いてきただろう」
ホロ「………うん」
ロレンス「なんだ?商売の邪魔をしたいのか。金を巻き上げるだけじゃ物足りないか」
ホロ「………」ふるふる
ロレンス「じゃあなんだ?理由もなく追い掛け回してきたのか」
ホロ「………」ふるふる
ロレンス「腹が減ったのか?金なら置いて来ただろう。好きなものを食べると良い」
ホロ「………」
ロレンス「ああ、そうか。金が少ないのが不満だったんだな。それで血眼になって追い掛け回していたのか、物乞いのように」
ロレンス「気付かなくて悪かった。銀貨なら満足だろう?腹いっぱい食べれば良い。ほら」
ぽいっ
チャリンチャリン……346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 11:11:21.02 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「拾えよ。欲しかったんだろう?これでお前を追い払えるなら安いもんだ」
ホロ「…うん」すっ
ロレンス「さぁ、それを持って帰れ。今は商売の途中なんだ。邪魔をしないでくれ」
ホロ「…うん」
ロレンス「じゃあな。俺はもう一商売してから帰る」
ホロ「そうかや。気をつけての」
ロレンス「……」
すたすた
すたすた
ホロ「くふ。ふふふ…」
ホロ「…わっちゃあなんじゃ?何をやっとるんじゃ?」
ホロ「地に膝をついて銀貨を拾って…賢狼…賢狼ホロが……」
ホロ「…惨めじゃ。あんまりじゃ」
ホロ「くふっ。くっくっく……」ぽろぽろ378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 11:28:22.92 ID:O0ym7W2KO
ホロ「腹…減ったのう」
ホロ「……わっちも意地っ張りじゃな。何か買って食べるかや」
ホロ「…そうじゃ、林檎…林檎、買って帰ろう」
ホロ「…許して貰ったら、一緒に食べよう」
トテトテ
店主「いらっしゃい。もうすぐ店じまいだ、安くしとくぜ」
ホロ「…上等な林檎じゃな」
店主「おお、お目が高いな。これは遥か西の果実園から輸入したんだ。どうだい、見事な色艶だろう」
ホロ「ふむ。じゃあこれを…6つくれるかや?」
店主「あいよ!嬢ちゃんの目に免じて一つ負けといてやるよ。毎度あり!」
ホロ「…」ニコ386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 11:34:24.91 ID:O0ym7W2KO
ホロ「…これで、機嫌治してくれるかや」
ホロ「謝って、謝って…許して貰えたら、一緒に食べよう」
ホロ「…商売上手く行って、機嫌よく帰って来てくれると良いのう」
ドンッ
ホロ「わっ…」
ドサドサドサ…
男「おっと、失礼しました。大丈夫ですか?」
ホロ「…いや、大丈夫。わっちこそ失礼した。考え事を…」
男「そうでしたか。お怪我がなくて何よりです。では失礼」
ホロ「…」ペコ
ホロ「あ……林檎……」396 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 11:39:01.24 ID:O0ym7W2KO
・
・
・
ホロ「…宿で待つとするか」
ホロ「林檎、痛まないかや…。少し落としたくらいなら大丈夫じゃろうか」
ガチャ
ホロ「…あやつの部屋で待つか、わっちの部屋で待とうか…」
ホロ「…」
ホロ「……ふむ。部屋一つ違うだけでこんなに淋しいもんなんじゃな」
ホロ「賢狼ともあろうものが…落ちたものじゃ」
ホロ「…うん、やっぱりあやつの部屋で待とう」
ガチャ
ホロ「……機嫌よく帰ってくれると良いの…」
ホロ「……」403 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 11:42:25.22 ID:O0ym7W2KO
・
・
・
ホロ「………」
・
・
・
ホロ「遅いのう…。商売、上手く行かなかったんじゃろうか」
・
・
・
ホロ「ロレンス…」
ホロ「……帰って来るんじゃろう…?捨てたりしないじゃろ…?」
ホロ「…」ぐぅ…
・
・
・
ホロ「!」ぴくっ
ホロ(階段を上がる音…!)412 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 11:47:14.32 ID:O0ym7W2KO
ガチャ…
ホロ「お、お帰り。遅かったの」
ロレンス「……ああ」
ホロ「…し、商売……どうじゃった…?上手く行ったかや」
ロレンス「なんでこの部屋に居るんだ」
ホロ「……あの……ぬしを、待って……」
ロレンス「出て行け。何度も言わせないでくれ」
ホロ「済まぬ…あの、ほら…これ。林檎、買って来たんじゃ」
ロレンス「…」
ホロ「ぬしと一緒に食べようと思っての…ほら、美味そうじゃろ?一つおまけしてくれたんじゃ」430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 11:55:31.27 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「……」
ホロ「…食べよう?ほら、一緒に」
ロレンス「……」
ホロ「西の国からのものだそうじゃ。ほれ、7つあるから、4つぬしに」すっ
ロレンス「…いらん」
ホロ「そう言わずに、食べてくりゃれ?」
ロレンス「…」ぽいっ
ドサッ
ころころ…
ホロ「……!!」
ロレンス「お前これ落としてただろう?俺に処理させようとするな」
ホロ「処理なんて…!」
ホロ「なんでじゃ……ロレンス!!なんでじゃ!!もう無理じゃ……!!」
446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 12:04:23.00 ID:O0ym7W2KO
ホロ「わっち…わっちはな?ぬしと旅して、ヨイツを目指して…楽しかったんじゃ」
ホロ「…ぬしも、楽しいと言ってくれたよな?」
ホロ「わっちだけじゃったのかや?…わっちが一人で浮かれていただけ…?」
ホロ「……わっちを助けてくれたのに…。好きって言ってくれたのに…!!」
ホロ「うっ……う、う……わっちだって、好きなのに……!!ぬしが好きなのに…!」
ホロ「……なんで…こんな仕打ち…?…うぇぇん……」
ロレンス「狼が羊飼いを忌避する理由はなんだ?」
ホロ「……え?」
457 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 12:12:47.73 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「思い出せ。お前はノーラにどんな感情を抱いていたか」
ホロ「…!」
ロレンス「理由を聞いたのはお前。……そういう事だ」
ホロ「わっちが……嫌い……?」
ロレンス「出掛けてくる」
ホロ「………どこに」
ロレンス「晩飯とな…。ちょっと今日は稼ぎがあったから汚れと鬱憤を晴らしてくる」
ホロ「…?」
ロレンス「わからんか。娼館だ」
ホロ「………嫌じゃ。行かんでくりゃれ」486 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 12:27:54.72 ID:O0ym7W2KO
ホロ「わっちが」
ロレンス「うん?」
ホロ「わっちがするから…行かないでくりゃれ」
ロレンス「…本気で言ってるのか」
ホロ「本気じゃ。ぬしが他の雌を抱くくらいなら、わっちゃあ…」
ロレンス「だったら話は早い」
ホロ「!」ぴくっ
ロレンス「お前が平気なら働き口はいくらでもあるじゃないか」
ホロ「…な」
ロレンス「娼館で勤めてくれるなら収入はかなりのものだ。世の中には色んな嗜好の人間がいるからな」
ロレンス「悪魔憑きを好む金持ち連中も居るんだ。じゃあ一緒に行くか…?」
ホロ「……」ふるふる
ロレンス「残念だ。じゃあ行ってくる。落ちた林檎は処理しておけよ?タダじゃないんだ」
ガチャ
バタン490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 12:34:31.33 ID:O0ym7W2KO
ホロ「……」すっ
しゃくっ
ホロ「…んふ。さすが西の林檎…じゃな」
しゃくっ
ホロ「美味い。頬が落ちそうとはこの事かや」
しゃくっ
ジャリ…
ジャリ…
ホロ「思えば丸一日何も食っておらぬのじゃからな。美味くて当然か」
しゃくっ
ジャリッ
ホロ「くふっ。くく、くくく………」
ホロ「う……くく、う……うぁぁぁ…!」
ホロ「うああああぁぁぁん!!!」493 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 12:38:09.18 ID:O0ym7W2KO
ホロ「…ひっ…う……うぐ……」
ホロ「……」
ホロ「……出て行こう。もう……限界じゃ」
ホロ「わっちがあやつを手にかけんうちに、出て行こう」
ホロ「遅かれ早かれ避けられぬ別れ。早い方が良いと言ったのはわっちじゃ…」
ホロ「………さよならじゃ、ロレンス。楽しかった」
ガチャ
バタン…525 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 12:53:46.14 ID:O0ym7W2KO
ホロ「……」
客「おい、聞いたかよ。あの露店商の」
客「ああ…店畳んだ所だろ。なんでも違法の薬草を使ってたらしいじゃねえか」
客「まぁ捕まるわな。巷じゃ麻薬として出回っちまったらしいし」
ホロ「…?」ぴく
店主「あいよ。ビールお待ちどうさん」
ホロ「うむ。ぬし様、少し聞きたい事があるんじゃが良いかや?」
店主「うん?こんな麗しい嬢さんに頼まれたら断れないな。なんでもどうぞ」541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 13:00:59.89 ID:O0ym7W2KO
ホロ「噂になっておる露店商の話…」
店主「ああ、あれかい。今朝しょっぴかれたみたいだな」
ホロ「何かあったのかや?」
店主「なんでも麻薬まがいのものを混ぜた食い物を売ってたらしいぞ」
ホロ「麻薬……わっちゃあ麻薬というものを知らぬ」
店主「頭をおかしくしちまう薬みたいなもんだ。ま、普通の人間には縁のないものだよ」
ホロ「ふむ…?それを売っていた露店商が捕まった、という訳じゃな」
店主「その通り」
ホロ「ちなみに……その露店商の位置は?」
店主「ああ、この前にでかい通りがあるだろ?市場の。あそこの露店だ」
ホロ「!」712 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 18:49:04.50 ID:O0ym7W2KO
ホロ「…………ついでにもう一つ。その薬草の効果は?」
店主「うん?まぁ、まともな会話は出来ないだろうな」
ホロ「……」
店主「どうした嬢ちゃん。誰か知り合いが薬草食っちまったか?はっはっは」
ホロ「笑い事じゃありんせん。…もう元には戻らないのかや…」
店主「本当にやっちまったのかい。かわいそうに、よっぽど冷たくされただろ?」
ホロ「冷たいなんてもんじゃありんせん。…この腫れた瞼を見ればわかるじゃろう」721 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 18:54:01.99 ID:O0ym7W2KO
店主「しかし、やっちまったか…気の毒にな」
ホロ「…どういう意味じゃ?」
店主「かわいそうだが、あの薬草は死ぬまで効果は消えないようだぜ?」
ホロ「…」ぴく
店主「やっちまった連れは嬢ちゃんの恋人かい?だとしたら気の毒な話だ」
ホロ「……嘘つき。ぬし様も人が悪いの」
店主「はっはっは、脅かしすぎたな。なぁに、心配せんでも丸一日でもほっときゃすぐに治るさ」725 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 18:58:05.38 ID:O0ym7W2KO
ホロ「……」ぽろ
店主「お、おい嬢ちゃん?すまねぇ、脅かし過ぎたか?」
ホロ「う……えぐ……!」ぽろぽろ
店主「…ど、どうした…悪い、そんなにびっくりするとは…」オロオロ
ホロ「ち……違……わ、ち…本当に…きら、嫌われたかと……」
ホロ「よかった……よかったぁ…………!ううぅ……」ぽろぽろ
店主「お、おーい…」749 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 19:08:33.19 ID:O0ym7W2KO
・
・
・
店主「…落ち着いたか?」
ホロ「…済まぬ。取り乱してしまった……」かぁぁ
店主「はっはっは、なぁに。恋人があれを飲んじまったんじゃびっくりすらぁな。知らないなら尚更だ」
ホロ「ぬし様にもご迷惑をおかけした」
店主「いやいや。俺も昔やっちまってなぁ。カミさんにエライ目に合わされた事があるんでね」
ホロ「くふっ」
店主「まぁ俺にも嬢ちゃんを泣かせちまった責任もあるしな。詫びだ、酒代は負けといてやるぜ」
ホロ「本当かや!?」
店主「ああ、くだらない嘘ついて済まなかったな」
ホロ「んふふ…酒代はまけてくれると言ったかや?」
店主「ん?ああ」
ホロ「ぬし様、おかわりじゃ!」
760 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 19:15:36.22 ID:O0ym7W2KO
ホロ「けふっ」
店主「…参った。もう勘弁してくれ」
ホロ「わっちも堪能したしの。これくらいで我慢しときんす」
店主「はは、高くついたもんだ。女の涙ほど怖い商品はないな」
ホロ「くくっ。……しかしじゃ……知らなんだとはいえ、わっちの負った傷は深い」
ホロ「…うむ。空腹の間は立つだけでも辛かったが…腹が膨れたら腹が立って来た」
店主「上手いな。ほら、早いとこ連れの所に帰ってやりな。殴ったとしても釣りが来るだろうぜ」
ホロ「うん。ぬし様、恩に着る。また改めて連れと寄らせてもらってよいかや?」
店主「連れがまともな顔を保ってたらな!」
ホロ「くふっ」772 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 19:21:45.87 ID:O0ym7W2KO
ホロ「うぅ…ずいぶん冷えるの」
トテトテ
ホロ「あのたわけは…もう娼館から帰っておるじゃろうか」
トテトテ
ホロ「………綺麗所の雌を抱いて来たんじゃろうの」
トテトテ
ホロ「……」
トテトテ
ホロ「わっちゃあ賢狼ホロ。あやつを懲らしめるにはどうすれば良いかはわかっておる…」
トテトテ
ホロ「……しかして、許しがたいの。許しがたい」
トテトテ
ホロ「さて…あの童め、いかにしてくれようか…」
ガチャ
780 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 19:26:07.45 ID:O0ym7W2KO
ホロ「ノックはいらぬな」
ガチャ
バタン!!
ロレンス「!」びくっ!
ホロ「……」
ロレンス「……」
ホロ「……」
ロレンス「……か、帰って来たんだな。…お帰り」
ホロ「ぬしよ」
ロレンス「………」
ホロ「座れ」
ロレンス「………はい」すっ808 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 19:37:31.82 ID:O0ym7W2KO
ロレンス(尻尾が垂れてる……)
ホロ「…」
ロレンス「あ、あのだな……俺もよくわからない。ただ…」
ホロ「雄と言うのは」
ロレンス「!」
ホロ「窮地に陥った時に価値がわかる。言い訳はこの場に相応しいかや」
ロレンス「…いや」
ホロ「……娼館はさぞ楽しかったろうの?」
ロレンス「行ってない…いや、入ってはいない。本当だ。信じてくれ」
ホロ「わっちはぬしの何を信じれば良い?」
ロレンス「…」
ホロ「二日間…たった二日間で、ぬしと旅をしてきて得た物が全て壊れた。わっちは悲しい…」
ロレンス「……言葉もない」832 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 19:44:45.03 ID:O0ym7W2KO
ホロ「……わっちがぬしから受けた口撃の傷は、永劫癒えやせんじゃろうな」
ホロ「……突き放し、飯も食わさず、銅貨を残して置き去りにし、あげく宣言してから娼館に行く」
ロレンス「ぐ……」
ホロ(やっぱりの…。なんでぬしが泣きそうな顔をするんじゃ)
ホロ「……この償いは、どうしてくれようの」
ロレンス「……償わせてくれるのか」
ホロ「なんじゃ?ぬしは愛想を尽かされたいのかや」875 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 19:56:47.51 ID:O0ym7W2KO
ホロ「わかった。ぬしがそう望むならば良い。わっちは一人でヨイツに行く」
ロレンス「!」
ホロ「借金はいくらだったかや?さっさと返して出て行ってやろう」
ホロ「ぬしが言った通り、雌には金を稼ぐ当てはいくらでもあるんじゃからな」
ロレンス「…!」
ホロ「そもそもぬしが居なければ元の姿でヨイツを目指せる。枷がなくなるんじゃ」
ホロ「どうやらこの旅に価値を見出だしていたのはわっちだけのようじゃしの?」
ロレンス「……………」
ホロ「見ろ。わっちが二言三言冷たい言葉を放つだけでそんな顔をするんじゃ…」
ホロ「……そんなぬしに、冷たく出来る訳がありんせん。わっちゃあ賢狼。ぬしが1番堪える方法も知っておる」903 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 20:03:51.17 ID:O0ym7W2KO
ホロ「ぬしが少しでも…ほんの少しでも、反論して来れば怒る事も出来ようがの」
ホロ「それにはちと、ぬしはお人よし過ぎる…。わっちもかも知れん」
ホロ「…わっちがあれだけ傷ついたんじゃ。ぬしのような繊細な心を持つ雄じゃ、死んでしまうかも知れんしの」
ロレンス「……はは」
ホロ「…元はと言えば、露店でなんでもかんでもねだっておったわっちも悪いんじゃ」
ロレンス「ホロ。どうして償えばいい」
ホロ「くふっ、それをわっちに聞くかや?ぬしはとことん…どうしようもない雄じゃな」917 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 20:09:44.61 ID:O0ym7W2KO
ホロ「そうじゃな。酒、肉、林檎はもちろんじゃが…」
ロレンス「…」
ホロ「…わっちは寛大じゃからの。一言で許してやろう」
ロレンス「一言…?」
ホロ「一言じゃ。わっちの受けた傷を癒やせるのはそれしかありんせん」
ホロ「それに…メソメソしとるわっちは、さぞ魅力的だったじゃろうしの。見物料込みじゃ」
ロレンス「!」
ホロ「一言でこの事態を収めてやろうと言っておる。くだらない事を言ったらそれこそ…」ぎろっ
ロレンス「わ、わかってる。ちゃんと言うさ」931 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 20:14:52.60 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「…ごほん」
ホロ(ふん…わっちも相当なお人よしじゃな)
ホロ(こやつが悪い訳ではないとは言え、あれだけの事をされて一言で許すなどと…)
ホロ(じゃが…こんな、どんな罰でも受け入れる憐れな罪人の顔をされたら…わっちも許さない訳にもいかんじゃろう)
ホロ(最も、こやつにはこれが1番堪える罰じゃろうがな)
ロレンス「…おほん。では言うぞ」
ホロ「うむ」ぱたぱた
ロレンス「…ホロ」
ホロ「……」ぱたぱた
ロレンス「…………済まなかった!!」がばっ
ホロ「…………は?」936 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/11(火) 20:17:40.42 ID:O0ym7W2KO
ロレンス「……許してくれるか?」
ホロ「…………」わなわな
ロレンス「あー………ホロ?」
ホロ「こ…のぉ……!!」ぴくぴく
ロレンス「…!?」
ホロ「たぁぁわぁぁけぇええええ!!!!」ばっ
ガブッッッ!!
ロレンス「ぎゃあああああああ!!!!?」
【終わり】
これからも載せて欲しい