上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ]
スポンサー広告 |
|
コメント(-)
野田Part
引用元:
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1277642145/
1 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:35:45.30 ID:Cu/S/k1b0
「おまえも成仏しろよ」
にやけた顔で音無が言った。
野田は威嚇するように反発する。
「ふざけるな!俺はお前の言いなりになどならん!」
まぁまて、と音無が諫める。
2 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:36:34.60 ID:Cu/S/k1b0
「お前の心残りを解消してやろう。と言っているのだよ」
「俺の……心残りだと?」
そうさ、と音無が両手を広げながら言った。
その仰々しい態度が妙に癪に触り野田はますます反発した。
「貴様に俺の何が分かるというのだ!」
3 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:38:11.50 ID:Cu/S/k1b0
手にしたハルバードを突き付けながら、野田はわめく。
しかし、音無はひるまない。
そしてその口から出た言葉は、野田を挫くには十分なものだった。
「お前童貞なんだろ?」
「――なっ!」
核心をついたその一言に、野田の思考が止まった。
そんな空白にも音無の言葉は続く。
4 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:39:09.24 ID:Cu/S/k1b0
「まぁ気にする事はない。俺も似たようなもんだ。
俺なんか病弱の妹が寝てる間にしか関係を持てなかった素人童貞だからな」
「きっ……さま」
野田がようやく絞り出した言葉はそれだった。
「まぁ落ち着け、そんな俺だからこそお前の事が分かるのさ」
「この外道めがっ」
5 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:40:07.80 ID:Cu/S/k1b0
音無の悪びれる様子のない態度に、勢いを取り戻した野田はハルバードを構え、臨戦体制を取る。
音無が野田の手にした獲物を指さして言った。
「それだよ、それ」
「何がだ!」
「そのハルバード」
6 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:40:40.50 ID:Cu/S/k1b0
疑問符を頭の上に乗せた野田のために音無は続ける。
「ジークムント先生の心理学において、そうした長物は男根の象徴だ。
野田。お前は銃が存在するこの世界において、わざわざその武器にこだわった。
それはなぜか?それこそがお前の持つコンプレックスの証だったのさ」
「……ぅっ」
ジークムント先生や、コンプレックスなど分からない単語ばかりだったが
言わんとする意味を感じ取り野田はうなった。
7 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:41:18.90 ID:Cu/S/k1b0
そんな様子を意にも介さず、目の前のエセ心理学者断言した。
「つまり!お前はセックス出来れば成仏できるのだよ!」
野田は膝まづいて、泣いた。
音無にすがりつくように泣いた。
「お、俺は、しかし俺は」
「安心しろ野田」
そんな野田に、音無は優しくささやいた。そして言った。
「分かってる。お前の望みはコレだろ?」
8 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:41:50.90 ID:Cu/S/k1b0
音無は徐に後ろのドアを開いた。
乾いた音を医病の廊下に残し、保健室へのそれが開かれた。
そこにある光景を見て、野田は驚愕に目を見開いた。
静寂の病室。その部屋のベッドには美しい少女が一人で寝息を立てていた。
それはまさに、野田の求める人物だった。
「ゆ、ゆりっぺ」
9 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:43:21.18 ID:Cu/S/k1b0
ゆり――通称ゆりっぺは、野田や音無たちの所属する団体のリーダーで
野田のあこがれの人物でもあった。
無意識のうちに、野田はズボンの後ろのポケットに手を当てる。
そこには、ゆりを隠し撮りした写真を収めていたのだ。
そんな様子を、音無がしたり顔で眺めている。
10 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:43:42.70 ID:Cu/S/k1b0
「安心しろ、野田。ゆりは後三日は起きないだろうさ」
「そ、それでは」
「……君の望みは今、成就される」
最後のひと押しを音無が口にした。
「さぁ、好きにしたまえ」
そう言いながら、音無は野田の肩を一度叩き去って行った。
野田の放心はしばらく続いていた。
11 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:44:27.66 ID:Cu/S/k1b0
◆
「逝ったか」
ゆりが一人で寝息を立てる保健室。
無造作に転がったハルバードを手に、音無がつぶやいた。
ゆりに近づいてみる。
そこには衣服が綺麗に整えられており、別段変わった様子のないゆりがいた。
しかし、そばの屑籠を見る限りは、そこには確かに情交の跡があり。
中には大量のティッシュが捨てられており、いくつか血を拭きとったものもあった。
「野田、お前律儀だったんだな」
12 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:44:49.78 ID:Cu/S/k1b0
ぶっきらぼうだった友の顔を思い出し音無は言った。
野田の忘れ形見のハルバードをもう一度見る。
彼とはあまり仲が良かったというわけではない。
それでも、いざこうして会えなくなったと感じると感慨も湧くものである。
――野田は成仏した。あいつは満足した。
13 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:45:31.98 ID:Cu/S/k1b0
「そうだよな?ゆり」
妙に大人びて見え始めたゆりは涼しげな寝息を返すだけだった。
でもその寝顔が野田の成仏を見送ってる、祝福している。そんな気がした。
空はどこまでも快晴。
すんだ青を窓から望みながら、音無は小汚いハルバードを窓から投げ捨てた。
「卒業おめでとう。野田」
―野田君の卒業式 おしまい