美容 求人 医師 求人 萌通新聞 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました 虚無と獣王(第一話?第三話)
2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | このエントリーを含むはてなブックマーク | コメント(-)

ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました 虚無と獣王(第一話?第三話)

viploader2d564953_convert_20090815174236.jpg

700 名前:虚無と獣王 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/17(火) 11:08:59 ID:3BOI1AvO

虚無と獣王
1 召喚者と獣王
突然だが、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールは、追い詰められている。
彼女は、周囲にある感情を侮蔑と嘲笑と無関心と極少量の同情で構成されていると考えており、それは概ね正しかった。
頭のどこかで、それも仕方のない事だという声がする。
まともに魔法を成功させた事など一度もなく、どんな簡単な呪文でも、引き起こされるのは望みもしない爆発なのよ。
皆が馬鹿にするのも無理のない事でしょう?素直に出来ないものは出来ないと言うのも美徳というものよ。
そんな分別くさい声を、ルイズは全身全霊をもって否定する。
ううううう煩いわね!ひひひ人が何を言おうがわたしは栄えある侯爵家の一員なのよそれがららららくらく落第なんて許されるわけないじゃないの!!
そう、彼女はトリステイン王国の名門貴族、その血を遡れば王家に繋がるというヴァリエール侯爵家の三女であった。
ほんの幼い頃から大貴族として、一国の中枢近くに存在する人間としての在り方を、ルイズは両親(特に母親)から叩き込まれてきたのだ。
そんな環境の中で培われたプライドが、そう簡単に負けを認める事を許すだろうか?
無論、否である。
まあ、自分に対する反論がどもり気味なのはこの際ご愛嬌というものだ。
あー……ミス・ヴァリエール……非常に言いにくいのだが」
「ひゃいっ!?」
ずいぶん風通しの良くなった髪型の男に話しかけられて、ルイズは素っ頓狂な声を上げた。
「申し訳ないが時間もかなり押してきている。そろそろ儀式を再開してもらえないかな?あと考えている事が全部口からダダ漏れなのは侯爵家の人間としてはどうかと」
「すすすすすみませんコルベール先生すぐに再開します!あとひとりごとに関しては優しい気持ちでほっといてください」



701 名前:虚無と獣王2/3 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/17(火) 11:14:33 ID:3BOI1AvO
トリステイン魔法学院の、春の使い魔召喚の儀式。
この儀式は学生にとってただ単に使い魔を召喚する、というだけのものではない。
使い魔の召喚により己の魔法属性が決定され、より高度な理論や実技を学んでいく為の重要なステップ。つまりは進級試験なのである。
召喚できない場合?そりゃあ勿論落第だ。いくら生徒が貴族だからといっても、それに例外はない。
そしてルイズは、現時点において24回にわたる召喚失敗を成し遂げていた。記録に残る怪挙といえよう。
ここまで失敗して、なお儀式の再開が許されるのには理由がある。
ひとつはルイズの実技以外の成績が非常に優秀である事。こと座学においてはかつてこの学院に在籍し、後に王立魔法研究所入りした長姉以上の成績を残している。
もうひとつはこの場の責任者であるジャン・コルベールがルイズを高く評価している事だ。成績だけでなく、常に理想の貴族足らんとするその精神を。
短気な教師なら3回目くらいで儀式を打ち切っていただろう。
ただ、25回目以降の失敗が許されるとは限らない。コルベールがさっき言ったように、時間が押してきている。
先程まで飛んできていた野次も、だんだん飽きてきたのか自分の使い魔との交流の方が大事と踏んだのかめっきり減っている。
自分が追い詰められている事を思い出したルイズは意識を集中し、祈るような気持ちで呪文を唱えた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン!我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」
結果は、これまでの失敗以上の爆発であった。
「うそ……」
思わずへたり込むルイズ。脳裏には家名に泥を塗ったと怒り狂う母と長姉が浮かんでいた。仮面をつけた母親がマンティコアに乗ってるあたり、やけにリアルだ。
そんなルイズを見てここぞとばかりに囃し立てようとした同級生たちの声が、ふいに止まる。
爆風の中、何かが存在する事に気づいたのだ。


703 名前:虚無と獣王3/3 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/17(火) 11:19:18 ID:3BOI1AvO
徐々に晴れつつある黒煙の中に、それはいた。

それは、3メイルほどもある巨体であった。
それは、赤銅の様な鱗をもっていた。
それは、マントと鈍く光る鎧を身に纏い、手には巨大な戦斧が握られていた。
それは、2足で立つ、鰐の頭をした獣人であった。

(召喚成功!?というかひょっとして大当たりやった落第回避OKわたしやればできる子流石だから怒らないで母様姉様ふえでかしたよくやったわね有難うございます父様ちい姉様)
人間の思考速度は弾丸より速いというが、ほんの一瞬でここまで思考した公爵家三女はある意味大物である。
ともあれ召喚が成功した以上、次は契約をしなければならない。
が、ここで、予想もつかない出来事が起きた。

それは、ぐるりと周りを見渡し、ただ一つ残された右目でへたり込んだルイズを見つめ、徐に口を開いたのだ。
「……ここはどこなのだ、少女よ」
「しゃしゃしゃしゃしゃ喋ったあああああああああ!?」
その場にいた人間の心がひとつになった瞬間であった。



831 名前:虚無と獣王2話 1/2 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/21(土) 09:37:17 ID:knh+tT7C
虚無と獣王
2 教師と獣王
ハルケギニアには、人間以外にも人語を解し、話す事が出来る生物が存在する。
エルフや翼人・吸血鬼などがそれにあたるのだが、しかし彼らは概ね人間に似通った姿をしているものだ。
けれど召喚された獣人は、二足で立ち、手には武器を持ってはいるが、人間とはほど遠い姿をしている。

また、かつて知性が高く、言語感覚に優れた韻竜と呼ばれる幻獣がいたとされているが、こちらは既に絶滅したといわれて久しい。
そして召喚された獣人は、鰐や蜥蜴等の爬虫類に似通った姿をしているが、竜ではないと思われる。

では、目の前にいるこの獣人は一体何なのだろうか?

一時の驚愕から真っ先に立ち直ったのは、学院教師にして今回の儀式の引率役である『炎蛇』ジャン・コルベールであった。
(教職に就いてから、いや、それ以前にもこんな生物は見た事がない……。まだ見ぬ東の地から召喚されたのか?)
(人語を話すという事は、知性も人間並みにあるとみていいだろう。エルフのように先住魔法を使えるのなら驚異だな)
(あの鎧と戦斧……戦士なのだろうが、一兵卒ではあるまい。風格からしても、騎士団長級かそれ以上)
コルベールは努めて何気ない風を装い、けれど袖口に隠した杖を意識しながらゆっくりと近寄って行った。
(召喚された「彼」に敵意がないならそれでよし。しかし……)
屈強な体躯、手にした長大な戦斧、もしかしたら先住魔法を操る可能性すらある獣人が敵対行動を起こした場合、果たして自分がそれを止められるだろうか?
(日々の鍛錬を怠ったつもりは無いが、今の私の力がどれほど通じたものか……生徒をどこまで逃がす事が出来るかが鍵だな)
ちらりと周囲を見回すと、大半の生徒が驚きから立ち直れていない中、青い髪を持つ少女が「彼」を油断なく注視しているのが分かった。
その近くにいた赤毛の少女も平静を取り戻しつつあるようだ。
ちなみに桃色の髪の少女はまだ唖然としている。
(まずは時間を稼ぐ。その後は出たとこ勝負になるか)
いざという時は己の身を盾にする覚悟で、コルベールは「彼」に声をかける事にした。

832 名前:虚無と獣王2/2 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/21(土) 09:40:06 ID:knh+tT7C
「横から失礼します。ここはトリステイン魔法学院。私はこの学院の教師、ジャン・コルベールと申します」
両手を軽く上げる事で害意がないのを示す。すると獣人は、少し離れた地面に戦斧を突き立て、コルベールの方を向いた。
(こちらにも害意はない、と取っていいのでしょうね。ですがまだ気は抜けません)
毛は抜ける一方なのはやはり贖罪なのでしょうか始祖よ、と少し現実逃避するコルベールだが、あくまで気は抜いていない。
「オレの名はクロコダイン。つい先ほどまでデルムリンという名の島にいた。他にも少し聞きたい事があるのだが、良いか?」
「無論です、ミスタ・クロコダイン」
「助かる。あとコルベール殿、と言ったか。オレの事は呼び捨てでかまわん。ミスタなどと呼ばれた日にはこそばゆくてたまらぬわ」
そう言って笑みを浮かべるクロコダイン。幼子がみたら泣き出しそうな迫力があったが、コルベールには好ましいものに思われた。
「では私の事もコルベールと」
「うむ。ではコルベール。ここはトリステイン魔法学院と言われたが、オレはその様な学校があるとはついぞ聞いた事が無いのだ。そもそもトリステインとは地名なのか?」
「ええ、この学院があるのはトリステイン王国ですから。……という事は、トリステイン王国もご存じない?」
「……ああ。では、パプニカ王国・ベンガーナ王国・カール王国を知っているか?」
「いえ、少なくともこのハルケギニアには、その様な名のついた王国は存在致しませんな……」
「そうか……」
会話が進むごとに、クロコダインの顔から笑みが消えていくのが判る。
(彼はハルケギニアの事を知らないようだ。そして私達も彼のいた地域についての知識は無い……)
(いくつかの王国の名が挙がった。彼の様な獣人の統べる国なのか、我等の様な人間も其処には居るのだろうか……?)
コルベールが頭の片隅でそんな事を考えていると、クロコダインは真剣そのもの、といった顔つきで次の質問をした。
「コルベールよ……お前たちは勇者ダイと、大魔王バーンの戦いを知っているか?」
「…勇者、ダイ……?失礼ですが、それは物語か何かの事ですかな?いえ、少なくとも私は知らないのですが、本には詳しい者が居りますので」
ちらりと青髪の少女の方を見る。彼女は無表情のまま、首を横に振って見せた。
(おや、『図書室の主』殿もご存じないか)
視線をクロコダインに戻す。すると彼は、どこか途方に暮れた様な表情で、頭を抱えこんでいた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ん、ああ、いや、大丈夫だ……ただ、オレよりも頭の廻る仲間がこの場にいて欲しかっただけで、な……」
「……?」
クロコダインの脳裏に、勇者の家庭教師やその弟子の大魔導師の姿がよぎったのを、コルベールは知る由もない。
「オレはどうも、とんでもなく遠い所に来てしまったらしいな……」
「あ、あの、コルベール先生!」
と、ここで、ここにきて、ようやっと茫然自失状態からの復帰を果たしたピーチブロンドの少女(お忘れかもしれませんがヒロインです)が声をかけた。
「ん?ミス・ヴァリエール、どうしました?」
「どどどうしましたじゃなくて!何時まで話し込んでるんですか!召喚できたんですから契約!コントラクト・サーヴァント!」
顔を真っ赤にして叫ぶルイズ。必死である。
「……おお!」
コルベールの悪癖は、一つの事に集中すると他の事が全く見えなくなる所である。
生徒を守るための時間稼ぎに集中する余り、神聖な儀式も契約も次の授業の事も完全に忘れ去っていた。
とは言え、規格外の召喚を成し遂げてしまったルイズにも、責任の一端はあるのかもしれないが。
「……おお、て!忘れてましたか!?忘れてやがりましたかセンセイ!!」
一気に沸騰する公爵家三女。傍で見ている分には面白い。自分が被害者でないのならだが。
「いえ忘れていた訳ではアリマセンヨ、ミス・ヴァリエール!そうですね召喚したら契約デスナ!」
「召喚?契約…?」
耳慣れない単語に首をひねるクロコダインに、ルイズはハイでアッパーなテンションを維持しながらこう言い放った。
「そう!あんたはわたしに召喚されたの!これからは使い魔として生涯わたしに仕えるのよ!」
「……」
一瞬の間をおいて、ルイズ以外の人間全員から、強烈なツッコミが入った。
「もうちょっと空気読んで言葉選べえええええええっ!!」


952 名前:虚無と獣王 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/25(水) 22:55:07 ID:zseJ23ii
虚無と獣王
3 契約者と獣王

はて、わたしは何か悪い事を言ったのだろうか。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは考えてみた。
? 目の前にいる獣人はたった今自分が召喚したものである。
? 魔法初成功バンザイ。
? 使い魔として召喚したのだから、主たる自分に仕えるのは当然の事だ。
? 魔法初成功バンザイ。
? そもそも使い魔に雇用期限など存在しない。その生涯を主と共に歩むのが使い魔の使い魔たる所以だと、わたしはそう教わった。
? 魔法初成功バンザイ。
? 故に、その事実を使い魔に伝えただけの事で、皆から総ツッコミを受ける理由などは存在しない。
? 魔法初成功バンザイ。
? だいたい栄えあるヴァリエール家の人間に空気読めとかゆーな。
? 魔法初成功バンザイ。
? あとなんで使い魔に言葉を選ばなきゃいけないのよ主と使い魔と言ったら親と子も同然ってちょっと違うな先生と生徒でもないわねえーと上司と部下というか将軍と兵士というかそうとにかくご主人様の方が使い魔よりも偉いんだからこっちが気を使う必要なんてないのよ!
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの茹だった脳内会議はそう結論し、周囲の総ツッコミを華麗にスルーしたのだった。

召喚された生物は自らの意思でゲートを通る。またゲートを通る際、術者に対する好意が刷り込まれる為、危害を加えることはない。
王立魔法研究機関は以上の様な研究成果をずいぶん前に発表しており、これは今を生きる魔法使いにとっては当然の常識であった。
ここ、トリスタニア魔法学院でも、召喚前の授業ではこう教えている。
どんな生物が召喚されても恐れることはありません。そこにいるのは唯一無二のパートナーなのです、と。

確かに召喚されたのが普通の獣であれば、まあ百歩譲って召喚されたのが異世界からきた普通の男子高校生であったならば。
同級生たちは野次が飛ばす程度の反応しか示さず、引率教師もサックリ契約をルイズに勧めていたであろう。
しかし、召喚のゲートから出現したのは誰も今まで見た事のない獣人で、人間並みの知性を有し、おまけにパッと見ただけでも強いと判る戦士であった。
今までの常識が通用するのか全く分からない。
何より本能が警告するのだ。目の前にいるのは人間という『種』よりも強い存在である、と。



953 名前:虚無と獣王 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/25(水) 23:00:41 ID:zseJ23ii
ルイズの発言により、その場の緊張は一気に高まっていた。
逃げ腰になる者多数、何かを守る為に覚悟を決めた者少数、初めての魔法成功による興奮で周囲の状況に気づいていない者1名。
次にクロコダインと名乗る「彼」が果たしてどう動くのか。状況を受け入れてくれるのか、拒んで暴れだすのかによって自分たちの運命が決まる。
一同の注目を一身に集めた獣人は、重々しく口を開いた。
「生涯仕える、というのは難しいな。オレにも事情というものがある」
それを聞いて即座に反論しようとするルイズを獣人が押しとどめた。
「オレに事情があるように、そちらにも当然事情というものがあるだろう。よければ聞かせてもらえるか?」
暴力を選ばず、会話によるコミュニケーションを取ろうとするその態度に皆は(大人だ……!)と思った。

一方、ルイズも興奮状態から徐々に醒め、同時に現状を把握しつつあった。
自分が魔法を初めて成功させて浮かれていた事、周囲の人達が獣人を警戒している事、その獣人が「話せばわかる」タイプであろう事。
なにより、彼に使い魔になって貰わなければ自分がとても困る事。
故に、ルイズは真摯に事情を説明する事にした。

「成程。その魔法に成功しなかったらレベルアップできず、最悪自宅に強制送還、か」
進級という概念が理解しづらかったのか、クロコダインはレベルアップという耳慣れない言葉を使った。
「そうよ。あんたからしたら大した事ない事情かもしれないけど……」
そういって俯くルイズ。だがすぐに面を上げる。
「で、そっちの事情とやらを教えて?」
「行方不明になった仲間を共に探してくれないかと戦友達に言われていてな。
あといくつかの国から近衛隊やら陸軍やらの長になってくれないかと勧誘されていたんだが、まだ返事をしておらんのだ」
「そ、それはすごいわね……」
ただの平民からそんな事を聞いてもルイズは信用しなかったであろう。だが、クロコダインから滲み出る風格というか威厳の様なものが、発言に深みと説得力を与えていた。
「あとは、己自身に誓った事もあってな、出来る事なら帰りたいのさ」
「誓いって?あ、あああの言いたくなければ別にいいんだけどっ」
「オレのいた所はしばらく前まで戦争をしていてな。それを一人の男が終結させた」
「……」
「だがその男は最後の最後に行方知れずになってしまった。生きてはいるのだが、どこにいるのか全く分からん。
だが生きている以上、いつかは帰ってくる。そいつが帰ってきた時に、自分が命がけで守った土地が荒れていたのでは合わす顔がないからな。
あいつのもたらしてくれた平和を守り抜くと、オレはそう誓った」
ルイズは再び俯いてしまっていた。落第だのなんだので騒いでいた自分が、急に卑小に思えた。


955 名前:虚無と獣王 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/25(水) 23:02:13 ID:zseJ23ii
「まあ、そんなわけでな。ずっとこの地にいる訳にはいかん」
この時点でルイズはクロコダインへの説得を半分諦めていた。
クロコダインは、その話や出で立ちからしても明らかに戦士であるのだが、その精神は貴族のそれに近いと彼女は感じていたからだ。
そんな男が己に課した誓いを、わたしの我侭で破らせてはいけない。
彼女の中の貴族としての部分がしきりにそう主張する。
その一方で少女としての自分が「イヤー!落第→退学→政略結婚のコンボはイヤー!」と叫んでいる。
二律背反に陥った少女を前にして、クロコダインはかがみこみ、視線を合わせた。
「この試験は召喚と契約が出来れば合格となる、と言ったな。
ならばオレと契約した上で、オレを故郷に帰す事は出来るか?オレに用がある時は、都合の付く限り参上するが」
クロコダインの出した譲歩案にルイズは一瞬顔を上げ、三度俯く事となった。
「それは不可能なのです、クロコダイン」
後ろからコルベールが声をかける。
「……サモン・サーヴァントは呼び出すだけの呪文なの。呼び出した相手を送り返す呪文なんて、聞いた事がないわ……」
消え入る様なルイズの言葉に、クロコダインの表情も流石に曇る。
「それはまた、ずいぶん一方通行な呪文なのだな……」
ルイズはクロコダインと目を合わせようとせず、俯いたまま尋ねた。
「ね、ねえ、どうしてここへ来たの?ゲートはただ現れるだけで、それを通るかは本人の意思に任されるの。
あんたは自分の意思でここへ来たんでしょう?」
言外に大事な誓いを破るような事をなぜしたのか、という響きがある。
「……あの鏡から、声がしたのでな」
「声?」
「ああ、男なのか女なのか、若いのか老いているのかも判らなかったが、確かに聞こえたのだ。助けを呼ぶ声が」
「……」
「祈るような、泣いているような、追い詰められている感じのする声だった。余りに切なげなものだったのでな、つい鏡に触れてしまったのだよ」
やや苦笑気味のクロコダインを見て、ルイズは直感した。
彼の聞いた『声』は、自分のものだと。
神祖の血に連なり、家族全員が大きな魔力を持つ公爵家に生まれながら、一切の魔法が使えず、起きるのは意図しない爆発だけ。
周囲に感じるのは希望と失望、同情と侮蔑、諦観と敬遠。
16歳の少女の肩に載せるには余りに重いであろうそれらを、平気だと、何でもないと撥ね退けながらここにいる。
だけど、平気ではなかった。大丈夫ではなかったのだ。自分のプライドが、折れるのを拒んだだけの事だ。
もし召喚の儀式が失敗のまま終わっていたら。
果たして自分は虚勢を張る事が出来ただろうか?



956 名前:虚無と獣王 ◆sP4al2/WBA [sage] 投稿日:2008/06/25(水) 23:05:33 ID:zseJ23ii
「……探すわ」
「ん?」
「帰る方法を探す、と言ったの。送喚呪文なんて確かに聞いた事ないけど、
ここの図書室には多くの文献があるから何かヒントになる様なものがあるかもしれないし、姉が王立魔法研究機関にいるからそっちから何か分かるかも」
もう充分だ、とルイズは思った。
魔法の使えない『ゼロ』のわたしが、初めて成功した召喚の呪文。
自分の、決して口には出さなかった『声』を感じ取り、大切な誓いの事も忘れてわたしに逢いに来てくれた。
クロコダインはわたしを助けに来てくれたんだ。
それだけで、もう充分。今度はわたしが助ける番だ。
「わたしが呼び出したんだから、住む処と食べ物は勿論提供する。学院にいるのが無理ならわたしの実家に来て貰ってもいいし」
両親が何と言うか判らないが、少なくともちいねえさまは喜んでくれるだろう。
体が弱く外に出れない、あの優しい姉の話し相手になってもらえれば、わたしとしても有り難い。
ルイズは正面からクロコダインを見つめる。
その姿は、真の貴族のものだった。

「その心遣いに感謝する」
クロコダインはそう言って、ルイズに頭を下げた。
「本当に良いのですか、ミス・ヴァリエール」
コルベールが心配そうに声をかけるが、ルイズは笑って答える。
「貴族に二言はありませんわ、ミスタ・コルベール」
コルベールは彼女の意思が揺るがない事を悟った。
彼は、この学院の中でも数少ない、ルイズの内面を評価している人間だったからだ。
「二人とも、何か質問などがありましたら私の所まで来なさい。援助は惜しまないつもりだ」
「では早速だが、いいか?」
右手を挙げたのはクロコダインだった。教師と生徒を見ながら彼は言う。
「契約とやらは、どうやるんだ?」
一瞬の間をおいて、わたわたとルイズが答えた。
「え?でも、あああの、ちょ、ええ?」
正確には答えようとしたが混乱して言葉になってなかった。
「帰る方法を探すといっても、そう直ぐに見つかるモノでもないのだろう。
その間、ただ食客になっているというのも性に合わん。ならば帰るまでの間、使い魔とやらになるのも悪くはあるまいよ」
「クロコダイン……」
(本当に大人だ……!!)
感動する魔法学院関係者一同。
「なによりこんな幼子の助けを拒んだとあっては、仲間たちに何を言われるかわからんからな!」
ガッハッハ、と豪快に笑うクロコダインに、ルイズは耳まで真っ赤にして飛びついて、そのまま契約のキスをした。
「だだだ、誰が幼子よもうふんとにもうこれでも16なんだからね!」




90 名前: 萌えっ娘。名無しさん 投稿日:2009年08月15日 18:49
クロコダンディ


91 名前: 萌えっ娘。名無しさん 投稿日:2009年08月15日 18:51
米で不覚にも


コメントいっぱい書き込んで










管理者にだけ表示を許可する



● みことちゃん を救う会からのお知らせ ●
御坂美琴
みことちゃんは生まれつき帯電体質で
一定期間毎にレールガンを発射しなければ、弱ってしまいます。

レールガンを発射させるには、本人以外の第三者からの
莫大な応援エネルギーがかかります 

みことちゃんを救うために
アニメランキングのクリックや
コメントの書き込みが必要です

どうか読者の皆様ご協力をよろしくお願いします