美容 求人 医師 求人 萌通新聞 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました 虚無と獣王(第九話?第十二話)
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ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました 虚無と獣王(第九話?第十二話)

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    \          .ljハ トkハ  从斗j │ ハ
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148 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/07/19(土) 20:50:06 ID:ScnyD757
虚無と獣王
9 虚無と微熱 

ジャン・コルベールが学院長室のドアをノックすると、聞こえてきたのは入室の許可ではなく連続的な打撃音と不連続の苦鳴であった。
またか、と溜息をつき、許可のないままドアを開けると、中には部屋の中心で何かを引っ掴み、肩で息をしている二十代前半と思しき女が立っている。
「失礼します。オールド・オスマンは見えられますかな、ミス・ロングビル?」
「オールド・オスマンは不在です。年甲斐も節操もない妖怪セクハラジジイならここにいますが」
「おお、それは妖怪だったのですか。てっきりボロクズだとばかり思ってましたよ、はっはっは」
「ええ、新種の妖怪ですので王立魔法研究機関に知らせなくては……報奨金くらい出るかしら?」
「……お主ら、雇い主とか老人とかに対する敬意は……?」
ロングビルに掴まれている妖怪が何やら非難の声を上げたので、2人は思った事をそのまま口にした。
「おお!この妖怪は喋る事ができるのですな!大発見なのでどうでしょう、バッサリ解剖などしてみては!」
「それはとても良い考えですわ!そうすれば動かなくなったり喋らなくなったりしますし丁度いいですね!」
「マテマテマテマテ!お主らマジで言っとらんか!? 儂じゃ!オスマンじゃー!!」
二呼吸ほど間を置いて、2人は不思議そうに言った。
「ええ、知ってますが、それが何か?」
オスマンは床に体育座りで丸を描き始めた。
「なんじゃいなんじゃい、尻をさする位、秘書への可愛いコミュニケーションみたいなもんじゃないか、それを全く暴力での返事など老人に」
「ミス・ロングビル、打撃は体の正中線上に入れるとより効果的ですぞ」
「成程、参考になります。こうでしょうか?」
「ぐはぁっ!!」
鈍い打撃音の後、何故か床に寝転がっている上司にコルベールは声を掛けた。
「そんな所に転がっていると風邪をひきますぞ、オールド・オスマン。あと報告したい事があるので起き上がって貰えませんかな」
「そ、そうじゃな………」
流石に生命の危険を感じたのか、素直にオスマンは机に向かった。引き出しに常備してある水の秘薬を一気飲みする姿は、学院長という要職に就いているとは思わせないものである。
「で、要件は何かね?儂も忙しいんじゃ、端的に頼むぞ」
「先刻のアルヴィーズの食堂での騒動についてです。生徒たちへの罰として何を与えるべきか、教師たちの間で意見が分かれております」
何だそんな事か、と言わんばかりのオスマンに、コルベールは言葉を重ねる。
「大した事はないのだからお咎め無しで良いのではという者から、停学並びに保護者呼び出しの上厳重注意という者まで意見はバラバラ、まさに会議は踊ると言ったところでして」
このままでは纏まらないが、何時までも生徒たちに食堂の掃除をさせておく訳にもいかないので学院長の考えを聞きにきたという。
オールド・オスマンは鼻をほじりながら言った。
「お主はどう思っとるんじゃ?コッパゲール君」
「コルベールです!……数日間の自室謹慎と主要教科のレポート提出、ですか。保護者への連絡は不要でしょう、『今回は』という但し書きがつきますが」
「んー、まあそれでいいじゃろ。生徒たちにはお主から伝えておくように。で、話はそれだけかの?」
「実はもう一つあります───どちらかといえば、本題はこちらです」
そう言ってコルベールは懐から一枚のスケッチと一冊の本を取り出した。
「なんじゃ、『始祖ブリミルの使い魔たち』? 随分古臭い本を持ち出してきたもんじゃが、これがどうした?」
「こちらは先日の召喚の儀で呼び出されたある使い魔に記されたルーンをスケッチしたものです。それを踏まえた上で、このページをご覧下さい」
「─────!ミス・ロングビル。少し席を外してくれ」
これまでの言動からは想像もつかない、鷹の様な眼をしたオールド・オスマンに一礼し、ロングビルは退室しようとして、
「ちゅう」
足下に、より正確に言うならばスカートの中を覗ける位置にいるネズミ、すなわちオールド・オスマンの使い魔にしてもう一つの目を発見した。
「ミス・ロングビル、打撃の際は足を肩幅に開いて立ち、手は上にあげてから顔の少し下に、体を45度開いて腰を回し、真っ直ぐ打ち込むとより効果的ですぞ」
「成程、参考になります。こうでしょうか?」
「ごふぅっ!?」
粋な打撃が粋な急所に入り、粋な悲鳴を上げながら老人が粋な勢いで倒れこむのを見届けた後、粋な笑顔を残してロングビルが部屋から出ていく。
一応念の為に静寂の魔法をかけてから、コルベールは床に倒れこんでいる上司に詳しい説明を始めるのだった。


150 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/07/19(土) 20:54:18 ID:ScnyD757
結局ルイズたちに言い渡されたペナルティは以下のものであった。

・三日間の自室謹慎
・四系統魔法それぞれの基礎と応用に関するレポート提出
・中世?近代トリステイン史の中から印象に残る人物を挙げ、その業績を纏める

露骨にゲンナリとした表情を見せる生徒が多い中、ルイズは処分が軽くすんで良かったと胸を撫で下ろす。
もし保護者呼び出しの措置でも喰らって家族が学院に来襲してきた日には、色々な事を覚悟しなければならないのだ。
因みに母親が呼び出された場合、覚悟の内容は己の死という事になる。
レポート提出が苦にならないと言えば嘘になるが、カッター・トルネードの直撃よりは遥かにましと言えよう。
実を言えば、意外な事に今回の騒動で一番反省しているのは、ギーシュでもギムリでもなくルイズであった。
使い魔に相応しい主になる、と誓った舌の根も乾かぬうちに今回の騒動と相成ったのは、クールダウンしたルイズを落ち込ませるのに充分な出来事だったのだ。
確かに最初に挑発してきたのはキュルケの方だが、その挑発に乗ってノリノリで騒ぎを拡大させてしまったのは自分である。
幸いクロコダインは「二度とはするな」の一言で許してくれたのだが、逆に言えば「二度目は許さん」という事でもあるとルイズは解釈した。
そもそもすぐにカッとなるのは、自分の中にある『理想的な貴族像』からかなりかけ離れていると言わざるを得ない。
そうだ、貴族たる者として、常に冷静である事を心掛けよう。ビー・クール、be cool。短気カッコワルイ。
そうルイズは心に誓い、同時にクロコダインを召喚してから誓い事が増えたなあと思うのだった。

一方、図書室では罰を喰らった男子生徒たちによる反省会兼レポート作成講座が開かれていた。自室謹慎? なにそれ美味しいモノ?
「いや、参った。本当に参ったよ僕ぁ。土下座しているのに全力ビンタだよ? 一瞬意識が飛んだよ、死んだ曾お祖父さまが川の向こうで手を振ってるんだ。あ、まだ振ってる」
両頬に赤い紅葉を張り付け、机に突っ伏しているのはギーシュ・ド・グラモンである。
「いいなぁ……バリアーもいいけど、僕もビンタ喰らいたいなあ……あぁ……ああ……!」
ギーシュの正面に座り、小太りの体をクネクネさせながらマリコルヌが顔を上気させた。
「オラそこぉ!ブツブツ言ってねぇでレポートの資料探せよな!こーいうの苦手なんだよ!」
レビテーションを使っての高い本棚の資料探しに苦心しつつ、鬱から復帰した肉体派のギムリが声を荒げる。
「ギムリ、そこは娯楽小説の棚だからレポートの資料はないと思うぞ? あと他二名は早急な現実復帰を勧告する」
ギムリにどうか一つと拝まれ、条件付きで手伝う事にしたレイナールが眼鏡の位置を直しながら言った。
「ああすまない、レイナール君。つい彼岸までイッてしまったようだよ」
「ええと、マリコルヌ、だっけか? ぶっちゃけイッたまま帰ってこなくてもよかったんだけどな」
レイナールではなくギムリが嫌そうな顔でぶっちゃけすぎな感想を漏らす。台詞を取られた形のレイナールだったが、感想についての否定はしなかった。


151 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/07/19(土) 20:58:29 ID:ScnyD757
「……しかしなんだな、なんだって君はここにいるんだね? 確かあの騒ぎには参加していなかっただろうに」
マリコルヌにやや遅れて現実世界に帰還したギーシュが、レイナールに疑問を呈した。
ギーシュとマリコルヌは同じクラスだったので互いの性分などは判っていたが、ギムリとレイナールに関して大した情報は知らない。相手の名前と属性程度の知識しかないのだ。
そんな4人がなぜ同じ机に座っているのかと言うと、周囲の目につかない場所にある机が1つしかなかったからである。
サイテー二股男と定冠詞付きのThe・真性、ピザ投げ鬱男に対する世間の眼は想像以上にイタイと、彼らは食堂掃除中に身をもって知った。
さておき、尋ねられたレイナールは肩をすくめて答える。
「手伝ってくれと頼まれたからね。まあギムリ一人じゃ3ヶ月あってもレポート提出は無理だから、後でぼくの実技演習に協力してもらう条件で手を打った」
「実技演習? 何の事だい?」
「ああ、こいつ『ブレイド』使いなんだけど、練習相手があまりいないんだよ」
机の上に山の如く積み上げられた資料を前にうんざりとした表情を浮かべたギムリの言葉に、ギーシュは感心したように言った。
「成程、確かにそうだろうね」
『ブレイド』とは杖に魔力を絡めつかせて刃と為す近接戦闘用の魔法であるが、その効力を生かすには剣の心得が必要であり、魔法学院では扱う者が少ない魔法でもあった。
極端な話だが、戦場において近接格闘を担当するのは主に平民であり、遠距離、つまるところ砲台としての役割を担うのがメイジである。
故に『ブレイド』等の近接攻撃魔法を使うのは魔法衛士隊や聖堂騎士といったエリートに限られる傾向があった。
「嫌なんだよなぁ。手加減しないし、常にこっちの行動を予測したような攻撃してくるし」
「おいおい、手加減はしてるし相手の行動予測なんて戦術の初歩だろ? さあ、雑談はこれ位にしておこう。ギムリ、トリステイン史のレポートに誰を挙げる事にしたんだ」
「……まず中世から近代が具体的にどの時代を指してるのかを教えてくれ」
「そこからか!いや、いい。ぼくが適当にピックアップする。『魅了王』アンリ三世なんかどうだ? 水精霊騎士隊の解散にも絡め易いし」
テキパキと指導を始めるレイナールと全く進んでいない自分のレポートを交互に見て、ギーシュは1つ提案する事にした。
「なあ、レイナール君。ぼくも後で実技演習に参加するから、こちらのレポートも手伝ってはくれないか?」
「……手伝いに関しては1人が2人になってもさほど変わらないからいいが、君は『ブレイド』を使えるのか?失礼だがそんなタイプには見えないけど」
「外見から人を判断するのは愚かな事だよ、というか君だって『ブレイド』の使い手には見えないぞ。
まあ確かにぼくは『ブレイド』を得手とはしないが、近接格闘に関して有効な魔法を得意としているんでね」
どこからか薔薇の造花を取り出して格好つけるギーシュだったが、観客は3名の男性なので全く意味がない。
因みにギムリは資料を何ページか捲っただけで眠りの園に誘われそうになっており、マリコルヌに至っては実技演習という言葉に何故かスイッチが入ったらしくハァハァ言いながら妄想の海にダイヴしている。
この国の将来に漠然とした不安を感じつつ、レイナールは取り敢えず歴史上の有名人を頭の中でピックアップする事にしたのだった。


152 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/07/19(土) 21:02:10 ID:ScnyD757
「ハァーイ、ルイズ。レポートは進んでるー?」
教師からの言いつけを律儀に守り、一歩も部屋から出ずにレポート作成に勤しむルイズの前に現れたのは隣室の住人にして先祖代々の仇敵、キュルケである。
自室謹慎何するものぞとばかりに食堂で夕食を平らげ、使い魔と共にアンロックの魔法で強引に鍵を開けて乱入した彼女にルイズはチラリと眼をやって言った。
「そういう貴女は進んでなさそうね、キュルケ」
素っ気ない返事にキュルケはおや、といった顔をした。いつもならここで食ってかかるルイズが思いの外冷静だったからだ。
これは一体どうした事だ。ムキになって反論してこそルイズ、冷静に反応するなど今は外出中のタバサだけで充分よ。とキュルケは勝手な事を思い、彼女が冷静さを保つ原因に想いを馳せた。
座学の秀才であるルイズがレポート如きに詰まる筈はないだろう。故に勉強疲れでツッコむ元気がない説は消えた。
机の隅に食器がある事から食事もどうやら部屋で摂ったようだ。故に空腹でツッコむ元気がない説は消えた。
では、残る可能性は1つ。
キュルケは再びレポートに戻ろうとするルイズの背に向けて言い放った。
「病気ね?」
「何いきなりエクストリームな事を言い出してんのよ!」
「なんだ違うのか。ざんねーん」
よしこれでこそヴァリエール、と心の中で思いつつ表情には出さないのがキュルケの流儀である。
「ま、元気そうで何よりという事よ。という訳であなたのレポートを参考にさせてくれなさい」
「ツッコミ放題のボケ発言をどうもありがとうツェルプストー。帰れ。部屋ではなく国へ」
「知識という物は広めてこそ価値があるのよ。栄養が頭にだけいって胸に行かない誰かには判らないかしら?」
「他人に教えられただけでは知識は身につかないわ。栄養が胸にしか行かなかった誰かには判らないわよね?」
ウフフフフフ、と笑いながら火花を散らしあう2人であったが、やがて溜息と同時に目を逸らしあった。不毛な会話に疲れたからである。
なにやってんのかしらと首を振り、課題に取り組もうとして、ふいにルイズは部屋の片隅にいるサラマンダーに気がついた。
「ねえ、それがあんたの使い魔?」
「ええ、フレイムっていうの。見て見て、この尻尾の大きさからして間違いなく火竜山脈出身だと思うのよ」
どうだ凄いでしょー、と言わんばかりのキュルケであったが、「へー、凄いわねー」というルイズの返事に拍子ぬけした様だ。
「なによ詰まんないわね。もっといつもみたいに「ムキー!」とか言って怒んないの?」
「怒った結果が今の謹慎と課題漬けでしょうが……。レポートならいつも一緒にいるあの小さい子に頼めば?」
「タバサ? それがあの子今出かけてるのよ、急用とか言って」
何時になく普通に進むキュルケとの会話の裏には、常に冷静足らんとするルイズの努力があった、というと大袈裟だろうか。
だが、冷静である事を努めた結果、ルイズはある事に気がついていた。
キュルケが絡んでくるのは何時も自分が何か失敗して落ち込んだりしていた時だったと。彼女との衝突が負けん気を生み、結果として自分は救われていたと。
(ああ、わたしはこれまで本当に余裕がなかったのね)
そう思ったルイズはキュルケに何か言おうとしたが、直ぐに中止した。
キュルケが本当に自分を励ますつもりで話しかけていたのか判らないし、今更そんな事を言った処で当のキュルケには笑われる気がした。
なにより真顔で礼を言うなど、余りに恥ずかしすぎるというものだ。
「ねー、いーじゃん見せなさいよー、減るもんじゃあるまいしー」
そんな思いを知ってか知らずかまだレポートに未練を見せるキュルケに、ルイズは仕方ないという顔を作って言う。
「あーもー煩いわね?、提出期限の前にタバサが帰ってこなかったら、か、考えてもいいけどっ」
慣れない演技についドモってしまうルイズに、キュルケは真顔で彼女のおでこに手を当てた。
「ちょっと本当に大丈夫? 熱でもあるんじゃないでしょうね」
あまりに真剣なその表情に、ルイズは笑いをこらえるのに苦労した。


493 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/10(日) 23:00:34 ID:tpcWvqTV
虚無と獣王
10 青銅と獣王 

フェオの月、ティワズのエオー、夜。
トリステイン魔法学院寮の一室に、酔っ払いが2人いた。
「でー?どーよあんなつかいましょーかんしたきぶんはー」
1人はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
『微熱』の二つ名をもつトライアングル・メイジ、褐色の肌と情熱的な性格で男子からの人気が高い彼女は、今、確かに酔っ払っていた。
「のみがたりません!るいずさま、のみが!のめ!」
1人はシエスタ。
炊事・洗濯・接客技能に長け、毎年男子学院生内で密かに開催される『ボクのメイドにしたい使用人コンテスト』で上位に入る彼女も、又、確かに酔っ払っていた。
そんな2人を眺めている、部屋の主である筈のルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールは、今、頭を抱えていた。
彼女は考える。何故こんな事態になってしまったのか。そして、誰にこの事態を招いた責任の所在があるのかを。
食器の片付けにきたシエスタを呼び止め、少し話したいと思ったわたしが悪いのだろうか。
否。親しくしているメイドと話す事の何がいけないと言うのか。
話の中でシエスタの出身地を聞いたキュルケが悪いのだろうか。
否。話の潤滑油として質問したのだ、悪い筈が無い。
出身地を答え、実家から送られてきた特産ワインを『ひとつ』進呈しようとしたシエスタが悪いのだろうか。
否。純然たる好意で言ってくれた事だ。悪いと言っては罰が当たる。
へえ、それはいいわねと言ったキュルケが悪いのだろうか。
否。シエスタが進呈しようとしたのはわたしの筈だが、断るつもりもなかったのでまあ良しとしよう。
『ひとつ』を1本だと思ったわたしが悪いのだろうか。
否。普通『ひとつ』と言われたら1本だと思うだろう、酒量的に考えて。
あにはからんや、12本入りの木箱を『ひとつ』持ってきたシエスタが悪いのだろうか。
否。ていうか意外と力持ちよねシエスタ、重くなかった?
流石タルブの特産品、美味しいもんだからカパカパ開けて5本ばかり空にしたキュルケとシエスタが悪いのだろうか。
…………悪いよね、どう考えてみても!
1人は謹慎中、1人は仕事中、少なくとも人の部屋でワインをかっ喰らっていい立場ではない。
なのに口当たりがいいからと凄いイキオイで飲んでいくもんだから、取り残されたわたしはまだグラス2杯目だ。
つまり、あっという間に酔っ払ったこの2人が悪いのであって、わたしに責任の所在はない。以上証明終了!
微妙に現実逃避っぽい脳内会議を展開したルイズであったが、彼女はひとつ忘れていた。
────酔っ払いに、あらゆる理屈は通用しないという事を。
「なぁーにかんがえこんでんのー、そんなんだからむねにえーよーがいかないのよー」
いつの間にか背後に廻り込んだキュルケが、ルイズの胸を鷲掴みにする。
「ちょ、ちょちょ、ちょっとどこ触ってんのよキュルケ!」
「いや……胸を触ってる筈、なんだけど、その、ええと、ゴメンネ……?」
「なんでイキナリ素に戻ってんのよ演技か今までのはって言うか筈って何よ筈って!しっかりあるでしょうが胸が!謝るなー!」
「そうです!しつれいです!いくらひんにゅうでもさわればあるはずです!そう、ほんのすこしでも、なんサントかは!」
「……ごめんシエスタ、ちょっと黙っててくれる?」
「何サント、というか、正直1ルイズという新しい単位を制定したいわね。わたしとしては」
ルイズは思う。今ここで2人に『不幸な事故』があったとしても、わたしは無罪だと。
「そうだ、ふくのうえからだからよくわからないんですよ!むきましょう!くだもののごとく!」
「その発想は無かったわ!」
ルイズは迷わず机の上にあったインク瓶に『錬金』を掛けた。
魔法は当然の如く失敗。だが今回は失敗こそが狙いだ。
派手な爆発音に2人が気を取られた隙に、ルイズは脱兎の如く逃げ出したのだった。


494 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/10(日) 23:04:28 ID:tpcWvqTV
さて、自分の部屋から逃げ出す羽目に陥ったルイズであったが、困った事に行く当てがなかった。
寮の中をウロウロしていてもつまらないし、誰かに見つかって怒られるのもゴメンである。
こんな時に泊めてくれそうな友人はいない。強いて言うならキュルケとシエスタが友人と言えるのだが、2人とも今回部屋から逃げ出す羽目になった原因である。
ある程度時間を潰せば酔っ払い共は沈没するだろうが、夕食後なので図書室は既に閉まっており、自室謹慎中とあっては教師も頼れない。
しかし、いや待てよ、とルイズは思いなおす。コルベール先生なら、大丈夫かもしれないと。
彼の研究室は塔の中にはないので他の人間に見咎められる可能性は低い。
謹慎中の身ゆえ怒られるかもしれないが、そこはそれクロコダインの事を知りたがっていたので判ったことを報告に来たという口実が使えるではないか。
よし、即断即決即実行とばかりにルイズは塔を後にした。
この時彼女はまだ気が付いていない。
クロコダインの事について、コルベールに報告できる様な内容は殆ど無いという事に。

(注:これまでの流れ ・召喚→契約→案内→爆睡→起床→授業→爆発→説得→昼食→戦争→一喝→謹慎→酒盛→脱出←イマココ)

ルイズが自分の調査不足に気がついたのは、コルベールを前にしてからであった。
より正確に言うと、こちらの予想通り謹慎中でしょうと眉を上げる教師に使い魔についての報告があると言ってから、である。
うわどうしようと思いつつ今までの流れを高速で思い返すと、今日の授業の後でクロコダインがある意味とんでもない事を言っていたのに気がついた。
「先生。彼の居た処では平民でも魔法が使えていたようです」
「! 本当かね、ミス・ヴァリエール!」
「はい、確かにそのような事を言っていました。平民の出でありながら、若くして大魔道士の称号を手にした仲間がいるって」
ハルケギニアにおいて、メイジには1人の例外もなく貴族の血が流れている。
この地において貴族とは、即ち絶対無二の力である魔法を意のままに操る強者を指しているのだ。
クロコダインの言った事はこの大前提を反故にし、貴族のアイデンティティを打ち壊しかねない問題発言なのであった。
「ミス・ヴァリエール、彼が今、何処にいるか分かりますか?」
「え? た、多分厩舎の方に居ると思いますけど……」
ルイズは少し戸惑っていた。いつも優しい、口の悪い者に言わせれば頼りない表情のコルベールが、険しい顔をしているように見えたからだ。
「はは、わたしも彼の話を聞きたいと思っていた処でしてな。ちょっと案内して貰えますかな? 謹慎の件についてはちょっとだけ大目に見ますので」
そう笑うコルベールの顔は、いつもの見慣れた表情だった為、ルイズはさっき見たのは気のせいだったかしらと思った。


496 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/10(日) 23:09:24 ID:tpcWvqTV
前方から三体のワルキューレの剣を時間差で襲いかからせてみた。
手にした青銅の手斧で一体目と二体目の剣が弾かれ、三体目の剣は一旦受け、敢えて下に流してバランスを崩させた後で地面に叩きつけられる。
さらに一歩踏み込んで横殴りの一撃。同じ材質で出来ているにも拘らずワルキューレは二体とも腰から両断され、手斧の方には目立った傷もないのは何故だろう。
隙あらば襲いかからせるべき後方のワルキューレは、しかし動かせないままだ。
外見からは想像できないが相手の動きは実に素早く、片目が失われているにも拘らず全方位を見通しているかのような体捌きを披露している。
迂闊に動けば直ちに返り討ちにあうに違いない。
かといって攻撃を怠れば確実にこちらの負けだ。防御に徹した処で守りきれる可能性は低い。
ワルキューレは残り三体。自分の護衛につけていた一体も攻撃に回す。同時に三方から攻撃させれば、流石に一撃位は入れられる筈だ、多分。
さっきまで一緒に戦っていた学友たちは、残念ながら戦線を離脱している。
開始10秒で紙の如く散ったぽっちゃりと体育会系はともかく、委員長系眼鏡の彼は実に粘ってくれた。
こちらに攪乱を指示しておいて、ワルキューレ一体を盾に死角であろう左側から接近。
手斧で戦乙女は粉砕されるのは織り込み済みで、咄嗟の反応がしにくい零距離まで接近、ブレイドを喉元に突きつけるのが彼の狙いだ。
まあ、まさか相手が体を半回転させて尻尾で薙ぎ払ってくるとは予想できず、あえなく脱落組の仲間入りをしたわけだけど。
努力賞といったところかな? もっとも、全てはこのギーシュ・ド・グラモンの活躍のお膳立てをしてくれたと考えればいいのさ。
これはアレだな、タイトルロールは最後に登場すると言うか、華麗なる『青銅』の最大の見せ場というか、まあそんな感じ?
さあ征けぼくの戦乙女たち、強大な力を持つかの使い魔を倒したとあればモンモランシーは勿論、他のオンナノコたちだってぼくの魅力にクラクラってちょっと待ってくれ給えよキミ!?
踏み込みが早い!早いよ!こういう時は焦った方が負けってなんでワルキューレ持ってブンブン振り回してますかッうわこっちキタ────!!

「とまあ白熱した展開だったんだけどね、最後は潔く降参の意を示したという訳さ。言うなれば惜敗、だが次はぼくの勝利によって」
「ああハイハイ要は四人がかりで戦ったのにあっさり完敗したわけね」
ギーシュ・ド・グラモンによる独演会は、ルイズの無情かつ端的な一言によって幕を閉じた。
一緒に戦った三人までもが生暖かい目で見守る中、ギーシュはささやかな抵抗を試みる。
「ルイズ、その散文的な言い方はトリステイン貴族として些か問題があると思うんだ。もっと、こう、抒情的にというか」
「時と場合と相手によるわ」
発言事にいちいちポーズをつけるギーシュを見るルイズの眼は、売れない大道芸人を見るそれに等しかった。
「そもそも近接格闘訓練の描写にリリカルな表現は必要ありませんな。あと謹慎中という事実について申し開きがあるなら聞いておきましょう、散文的に」
「コルベール先生までッ!? いやでもルイズだって謹慎中の筈ではッ」
「わわわわたしはいいのよ先生の許可も得ているしっ」
「許可したのは事後承諾だった気がしますがまあいいでしょう。そもそも何故こんな事をしているのです、君たちは」
コルベールの問いに答えたのはそれまで沈黙を守っていたクロコダインだった。
「なに、こっちにきてから碌に体を動かしてなかったんでな、無理を言って運動不足の解消に付き合って貰った。あまり責めんでやってくれ」
平然とした顔でそんな事を言うクロコダイン、だが聞いていたギーシュ達が驚いた表情をしていた為、彼らを庇う発言だという事がコルベールには知れる。
それはクロコダインにも判っているようで、少し目を逸らしながらさりげなく話題を変えた。
「そういうお主らこそどうしてこんな処に? 何か用事でもあったか?」
「そう!昨日は学院の説明位しかできなかったでしょ? だからもう少しハルケギニアの事を知っておいて欲しいのと、あとクロコダインの居たところの話って碌に聞いてなかったから」
クロコダインは少し困ったように答える。
「別にそれは構わんが……こんな時間にか?」
「あ。」
考えてみればもうすぐ消灯時間である。確実に長話になるであろう情報収集に向いた時間帯ではなかった。


497 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/10(日) 23:13:42 ID:tpcWvqTV
「話は明日にでも出来る。今日はもう休んだらどうだ? 昨日に続いて色々あった事だしな」
「むー……」
確かにクロコダインの言う通りなのだが、問題は部屋にいる酔っ払いたちの言動だ。あとクロコダインの話を聞きたいというのもある。
ていうか自分の使い魔がなんでギーシュ達と訓練なんかしてんのよ、と少しキレそうになるが、そこは常に冷静にと誓ったばかりの身であるのでグッと堪えた。
「……確かにその通りですな。ミス・ヴァリエール、クロコダイン、明日の午後にでも私の研究室に来て頂けますかな?」
「構いませんけど、先生、授業は?」
「自習という事になりました。たった今、不思議な事に」
それでいいのか教職20年、とその場にいた生徒たちは全員そう思ったが口には出さなかった。
「さあ、部屋まで戻りなさい。ああ、ミスタ・グラモン、君たちもです」
「少し待ってくれないか、コルベール。ちょっと言っておかねばならん事があるからな」
クロコダインはそう言ってコルベールを制すると、ギーシュ達に向きなおった。
「さっき付き合って貰った『運動』についての事なんだがな、最初に突っ込んできたのは確かギムリと言ったか」
「え、あ、ああ」
「未見の相手に単独で正面から攻撃するのは頂けん。何も考えないで攻撃しているのがすぐに分る。せっかく仲間がいるのだ、連携する事を前提に動いた方がいい」
「……」
「だが、躊躇なく向かってくる度胸は買いだ。連携を意識する余り縮こまっては意味がないからな」
ギムリは少し考え込むような素振りを見せた。自分でも思い当たる事があるのだろう。
「次は、あー、マリコルヌか。敵を前にして怯えるな、とは言わん。だが決して竦んではならん。敵に向うにせよ、逃げるにせよ、体が動かなければ待っているのは己の死だぞ」
「……」
「言っておくが逃げるのは決して恥ではない。怯えるのもそうだ。オレも敵を前に震え、死を覚悟した事がある。守る者がいたから無理やり体を動かしたがな」
マリコルヌは信じられないと言った顔だ。目の前の使い魔が死を覚悟するような敵とは一体どんな化物なのか想像もつかない。
「レイナール。人形を囮にしてこちらの動きを読み、懐まで飛び込む動きは大したものだが、それは人間相手の動きでもある。ここにはオレの様な怪物はいないのか?」
「いえ、オーク鬼やトロール鬼といったモノが存在します。貴方の様な姿ではありませんし、知性も低いですが……」
「そうか。敵がどんなものでも戦う時は相手の姿をよく観察し、取りうるであろう戦法を推察しろ。リーチや歩幅から攻撃範囲を把握するだけでも随分違うぞ」
尤もこれは魔法というものを全く考慮に入れていないし、想像もしないような攻撃をしてくる奴もいるが、と断りを入れるクロコダインをレイナールは見つめる。
多分彼にも何らかの『隠し玉』があるのだろうと思いながら。
「最後にギーシュ、あの人形の制御はすべてお前がしているのか? それとも自動で動くものなのか?」
「ぼくが動かしているものだよ。基本的には命令をしておけばその通りに動くのがワルキューレ──ゴーレムだからね」
「姿形はどうなっている? 作れば皆ああいう凝った姿になるものなのか、自在に形を作れるのか」
「勿論メイジの思うがままに形を決定できるものさ。あんな優美な姿を作れるのはぼく位のものだけどね」
またもやポーズをつけるギーシュに、クロコダインは言う。
「確かに凝った造形だと思ったが、もう少し凝るべきところを考えた方がいいな」
「というと?」
自分の美意識に文句をつけられたと感じたのか、少しむっといた声を上げるギーシュ。
「作った人形の全てに剣を持たせていただろう。丁寧に長さも同じものを。弓は難しいだろうが、槍などは持たせられないのか?」
「あ。」
「レイナールにも言ったが、敵の攻撃範囲を予測しろ。相手の手の届かない場所から攻撃できればそれだけ有利になる」
「……」
「自分の守りに就かせていた人形がいたが、剣の代わりに盾を持たせてもいいだろう。最初から予備戦力のつもりだったのなら的外れな指摘だが」
予備戦力なんて考えてもなかった。これまで行ってきた決闘ではワルキューレを五体も出しておけば必ず勝てたし、当然武器の工夫などしないですんでいたのだから。
「だが1人であれだけの人形を制御できるのは大したものだ。使い方次第でいい働きをするだろうな」
クロコダインはそう言うと、青銅の手斧をギーシュに差し出した。


498 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/10(日) 23:17:07 ID:tpcWvqTV
「話が長くなってしまったが、これを返しておこう。なかなか使い勝手が良かった」
それは訓練前にギーシュが作ったものだった。持ち歩いている戦斧は手加減がしにくいとの理由から頼まれ、ワルキューレ一体分の精神力を使って生成したものだ。
「いや、ぼくじゃ使いようがないし、持っててくれて構わない。次の訓練の時にも必要だろう?」
「次?」
「おいおい、まさか勝ち逃げなんて考えてるんじゃないだろうね? 折角アドバイスまで頂いてるんだ、次に生かしてこそとするものだろう」
気障なポーズで気障な事を言うギーシュに仲間たちが追随する。
「確かに勝ち逃げは良くないなあ」
「ぼくたちは色々勉強になるし、貴方にとっても運動不足の解消になるでしょう? 魔法についてもある程度知る事が出来るでしょうし」
クロコダインは困ったようにルイズとコルベールを見た。自分1人で判断していいものか迷っているようにも見える。
先ず口を開いたのはコルベールであった。
「……まあ自主訓練に関してはこれまでも行われてきた事ですし、とやかく言うのも野暮というものでしょう。但し謹慎が明けてからにしなさい、示しがつきませんから」
次にルイズ。微妙に拗ねている。
「べっ、別に好きにしたらいいじゃないのっ。クロコダインがそうしたいんだったらっ」
明らかに本心は主である自分を優先してほしいと判る発言であった。
「ふむ。ではルイズには監督役としてきてもらうかな? 勿論参加してくれても一向に構わないが」
「いい考えね。しっかり監督するから覚悟しなさいよ!」
あっさり機嫌を直すルイズである。
(何を監督するんだ? ひょっとしてぼくたちをか?)
(なんかよくわからないけど確かに覚悟は必要かなあ)
(美少女貧乳鬼監督に思うさまに詰られる……イイネ!凄くイイヨ!)
取り敢えず表立っては異論は出なかったので、講師クロコダイン、顧問コルベール、監督ルイズ、参加者都合のつく有志による近接格闘研究会(仮)がなんとなく発足する事となった。
この会の主要メンバーが後の水精霊騎士隊の中核になる事は、この場にいる誰にも想像のつかない事である。

就寝時間間際、ルイズはそっと自室の扉を少しだけ開く。
中を窺うと、なぜか半裸のキュルケが机の下で潰れている。周囲には空き瓶が散乱していた。
ここからは見えないが、この分ではシエスタも恐らくは沈没しているだろう。
ルイズは極力音を立てないように部屋に入り、自分のベッドへ向かった。寝た子を起こすような事はしたくない、身の危険に関わるし。
そろりそろりと進むそんな彼女の肩を、ぽんと後ろから叩く者がいた。
ギギギ、と音をたてて恐る恐る振り向くと、そこにはイイ笑顔のシエスタがワイン片手に立っており、その足元にいつの間にか追加されたワインのケースが鎮座ましましている。
すっかり血の気の引いたルイズにシエスタはイイ笑顔のまま宣告した。
「のめ。そしてぬげ」
偉大なる始祖ブリミルよ。わたし何か悪い事したでしょうか。あと夜が明けるまで、わたし生きていられるでしょうか。
朝日が昇るまで、あと7時間。ははは、と乾いた笑い声が夜の闇に消えていった。


565 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/15(金) 22:25:03 ID:jR5DnM4l
虚無と獣王
11 生徒たちと獣王 

三日間の自宅謹慎を終え、ルイズたちは久しぶりに部屋から出る事を許された。
以下、謹慎中の出来事について。

謹慎中にワインを痛飲した者及び痛飲させられた者は、翌日全く記憶のないメイドに向かってひとしきり恨み節を吐いた後、揃って水の秘薬を持ってくるよう命じた。
当然二日酔い対策である。
一番飲んでいた筈のシエスタが、当日の記憶がない事以外全く酔いの跡を残していない事について、ルイズとキュルケは理不尽だと思ったが口には出さなかった。
頭は痛いわ気持ちは悪いわで、そんな元気すら湧いてこなかったからである。
幸い水の秘薬の効果によって二日酔いからは脱出できたが、その分想定外の出費に懐は寒くなった。

レポート作成の為に図書室に行くのは許可された為、謹慎組は自然とそこで顔を合わせる機会が多くなり、そこでも少しのトラブルが起きた。
王室に関しての参考文献を探していた筈のギムリが何故か学院の古い設計図を発見したり、
水兵について調べていたマリコルヌが突然ハァハァ言い始めたり、
ギーシュとモンモランシーが犬も喰わない痴話喧嘩を始めたり、
毎日図書室に入り浸っているタバサが煩い連中を纏めてエア・ハンマーでふっ飛ばしたり。
そのレポートに関しては、ルイズ・モンモランシーは独力で、キュルケは帰ってきたタバサの協力で、ギーシュ達はレイナールのアイディアをほぼパクッて終了させた。
出来に関しては推して知るべし。

自習にしてまでクロコダインの話を聞こうとしたコルベールは、無事に話は聞けたものの、後で学院長に知られ酷く叱責された。当たり前だが。
この時、クロコダインが東方ではなく異世界から来た事が発覚し、ルイズ・コルベール・クロコダインにはオスマンから厳重な緘口令が敷かれた。
異世界から来たクロコダイン、異世界にゲートを繋げたルイズの情報が外部に知られた場合、余り愉快な事態にはならないと考えられた為である。


567 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/15(金) 22:30:07 ID:jR5DnM4l
「さて、そんなこんなで謹慎期間が終了した訳だけど」
フェオの月、ティワズのオセル、夕食後。
ヴェストリの広場に1人の少女が仁王立ちしていた。
桃色の髪にスレンダーな肢体、言わずと知れた『ゼロ』のルイズである。
彼女はいつもの制服姿ではなく、綿のシャツに乗馬用のズボンと活動的な服装で、手には何故か乗馬用の鞭を持っていた。
そして胸を張り、威厳に満ちた表情で告げる。
「監督として今回の訓練における意気込みをみんなに聞いておきたいと思います」
「その前に質問があるのだが」
ルイズの前に体育座りをしている男子生徒4人の中の1人、『青銅』のギーシュが手を上げた。
「なにかしら、ギーシュ」
「本当に監督をする気なのかい?」
「何か問題でも?」
質問に質問で返される。ギーシュはこの少女を如何に説得して監督降板してもらうか考えてみたが、彼女のこれまでの言動を顧みるに説得するだけ無駄だという結論を得た。
「いや、特に無いという事にしておくよウン」
「なら結構。ハイ、ではギムリから抱負を述べるように」
「それでいいのかギーシュ。というのはさておいて、取り敢えずいきなり突っ込むのはやめて連携をしたい。誰か指示を頼む」
ルイズは少し考えてから答える。
「確かレイナールと一緒のクラスよね? コンビで行動、その都度レイナールが指示という体制でいいかしら」
「まあそれが確実だろうな。了解」
「では次、マルコリヌ」
「情けないぞギーシュ。えーと、立ってるだけじゃダメだからとにかく動こうと思う……。だから、誰か指示してくれると助かる」
んー、とルイズは考え込んで、本人に誰の指示で動きたいか聞いてみる事にした。
「そうだね、最初はギーシュかレイナールに頼もうと思ってたんだ。『ゼロ』のルイズの指示で動くのなんて嫌だって。でも今のキミの服を見ていると何か悪し様に罵りながら指示を」
ルイズは彼に最後まで語らせず、強引に言葉を重ねる。
「レイナール、面倒を掛けるけど指示してあげて」
「……了解。正直気が乗らないけど、多分今の君ほどじゃないだろうし……」
「その通りよ。あと昔『戦場では常に前から攻撃が来るとは限らない』って言われたのを思い出したわ、何でかしら」
「頼むから実行しないでくれよ……。それにしてもヴァリエール家では娘にそんな事まで教育しているのかい?」
「いえ? わたしが小さい頃、親に話をねだった時に聞かされただけなんだけどね」
ルイズは軽く肩をすくめて見せる。
「そういえばヴァリエール公は無類の戦上手と父上から聞いた事があるよ。流石に戦場の機微に通じているんだなあ」
すっかり感心した口調のギーシュに、ルイズは訂正を入れた。
「教えてくれたのは母様なんだけど」
「あまり他人の家庭事情に首を突っ込みたくないんだけど敢えて聞こう。何故母親……?」
「ギーシュ。私の父様はこう言っていたわ。『宮廷でも家庭でも生き長らえるコツはただひとつ。自分より強い相手とは戦わない事だ』って。それを踏まえた上で、答えを聞きたい?」
「答えって何だい? ボクはシツモンなんてシテイナイヨ?」
カクカクと答えるギーシュを見て、ルイズはため息をついた。


568 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/15(金) 22:34:08 ID:jR5DnM4l
「貴方長生きするわきっと。って話が逸れたわね。えと、次はレイナール」
「どうかと思うなギーシュ。そうだね、前回で相手の攻撃範囲は大体判ったから、『ブレイド』の長さを伸ばしてみたいと思う。あとは連携の指示を上手くしないとなあ」
「『ブレイド』は最初から伸ばさず必要な時だけ長くすると効果的かしら。それと、連携については最初から上手くいく訳ないんだから気楽にね」
レイナールは少し感心したように言う。
「結構考えているみたいだね、ヴァリエール。他には何かあるかい?」
「それなりにはあるけど、まずは一戦交えてから、ね。さあ、皆の意気込みは分かったからそろそろ始めましょうか」
「いやいやいやちょっと待って! ぼくは? ぼくの意気込みや抱負は聞かないのかい!?」
慌てて抗議するギーシュ。呼び出してあったワルキューレが同じ素振りをする辺り、芸が細かい。
「仕方ないわね。じゃあ一応聞くけど」
「畜生覚えてろよ……。ワルキューレの武器にバリエーションをつけた。攻撃用に長槍と小盾、防御用には剣と大楯を装備させたんだ。今回は武器のみの変更だけど、いずれワルキューレ本体も用途に合わせて変更していく予定さ」
得意げに語るギーシュにルイズ達は驚きを隠せなかった。
「ちょ、ちょっと待って! ギーシュが至極まともな事を言ってるんだけど!? どどどうしよう、どうしたらいいの!?」
「そんな!! 二股がばれてひたすらおろおろしていたあの姿は擬態だったとでも!?」
「おお……お助けください、始祖よ……!」
「君たち、僕の家が代々軍人を輩出している事を忘れてないか……? 畜生、ホントに覚えてろよ……」
低い声でぶつぶつ呟くギーシュの横で、ワルキューレがその動きを正確にトレースしていた。正に高度な技術の無駄使いである。
しばらくして、一時の驚愕から何とか立ち直ったルイズが監督として改めて檄を飛ばした。
「さ、さあ! 何か有り得ない事が起こった気がするけど多分気のせいだから気にせず行くとするわよ!」
「「「了解!」」」
「畜生! ホンットに覚えてろよ!!」


569 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/15(金) 22:38:11 ID:jR5DnM4l
んな学生たちを見つめている影があった。
学院長の秘書、ロングビルである。
彼女には、今、深刻な悩みがあった。
それはオールド・オスマンのセクハラの所為でも、コルベールのアプローチとも言えない様なアプローチの所為でも、何か勘違いした男子学生(稀に女学生)からの恋文の所為でもない。
いや、正確にはそれらの事も悩みではあったのだが、深刻ではない。今のところは。
深刻なのは、彼女がとうに捨てた筈の祖国が現在内戦状態になっている事にあった。
内戦自体はどうでもいい。せいぜい互いに殺しあってくれれば重畳というものだ。
問題は、決して表舞台に出ることの出来ない者が身内に居る事である。
内戦でどちらの陣営が勝利したとしても、彼女が見つかればどうなるか、想像するまでもなかった。
出来る事ならば早急に彼の地を離れる必要がある。しかし、彼女と彼女と暮らす孤児暮らす孤児たちを戦火の及ばない場所に移し、生活を安定させるには大金が必要だ。
そして学院長秘書としての俸給では、そんな大金は捻出できない。
(意外とここは住み心地が良かったんだがねぇ)
屋根のある場所で寝泊まりが出来、出てくる食事は豪華で美味い。俸給だって悪い訳ではない。
ある目的の為に就いた秘書という仕事も、それなりに遣り甲斐はあった。
だがロングビルには判っている。自分のこの感情はただの感傷に過ぎない。義妹と同じ年代の子供たちを見た所為だろうか。
あくまで仮の姿である筈の『ミス・ロングビル』が、無意識のうちに定着しつつあったのかもしれないが、それは本来の自分ではなかった。
(そろそろ店仕舞いの準備をしないとねぇ)
そう思い、もう一度学生たちの方を見る。
小太りの生徒が足を縺れさせ、青銅の人形に激突していた。見ていた桃色の髪の生徒が何事か怒鳴り、眼鏡の生徒が頭を抱えている。
それは傍から見れば訓練ではなく寸劇の様で、相手をしていた気のいい(とロングビルは判断した)使い魔も苦笑しているのが判った。
その光景は、もしかしたら自分が世の中の事を何一つ知らなかった頃に過ごしていたかもしれない光景。
その光景は、もしかしたら隠れ住んでいる義妹が過ごせる筈だったかもしれない光景。
やはり寸劇のように見える訓練から目を逸らし、ロングビルは思う。
意外とここは住み心地が良かった、と。
やがて彼女は感傷を振り払い、中庭ではなく本塔を見つめる。
その眼は、獲物を狙う猛禽類のものだった。


570 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/15(金) 22:43:22 ID:jR5DnM4l
「どうしたの、クロコダイン?」
訓練が一段落し、ギーシュ達が地面にへたり込む中、1人元気な監督が己の使い魔に声を掛けた。
「いや、さっき誰かの視線の様なものを感じてな、気配を探ろうとしたんだが……」
そう言って周囲を見回す。
「気のせいだったか……?」
他人の視線など露ほども感じなかったルイズは「そうなんじゃない?」と気楽に答える。
「まあ、それにしても、だ」
地べたで荒い息をつく4人に、クロコダインは感想を述べた。
「接近戦を担当する人間が多すぎるだろう。ギーシュの人形や接近戦を学びたいレイナールはともかく、他の2人は後ろから魔法を使ってもいいんだぞ」
「ちょっと待って! いくら相手がドットメイジでも魔法が直撃したら怪我どころじゃ済まないわよ!?」
思わず声を上げるルイズに、クロコダイルは笑って答える。
「オレはここの魔法については素人だが、魔法で敵の動きを鈍らせたり目晦ましをしたりする事は出来ないのか?」
その言葉に、ルイズ達は車座になって話し始めた。
「どうだろう、つまり攻撃魔法じゃなくて、支援としての魔法という事かい? 授業ではそんなの習ってないと思ったけど」
「でも工夫次第でなんとかなりそうじゃないか? 土の系統魔法なら地面を錬金する事で足止めとか出来そうだ」
「相手の目の前で『着火』を使えば目晦ましになるのかしら……」
「風魔法で土煙を上げるとかでもいいんじゃないかな」
今まで考えた事が無かった魔法の使い道だけに、彼女らの会話も盛り上がる。
「戦う時に自分の有利な条件を多く作る事が出来れば生き残る確率はそれだけ高くなるだろう。逃げを打つ時も同様だ」
どすん、と座り込み胡坐をかくクロコダインに、ルイズは少し怒ったように言った。
「貴族は敵に背を見せないものよ、逃げるなんて以ての外だわ」
対して、クロコダインは窘めるように答える。
「それはそれで立派な考えだが時と場合によるだろう。例えばどうしても果たさねばならない目的がある場合、余計な戦闘を避け撤退するのも一つの道だ」
「むー……、それはそうだろうけど……」
些か納得のいかない主に、使い魔は笑顔を見せた。
「誇りを重んじる気持ちはオレにもよく分かるが、無理をして無謀な攻撃をしても良い結果は得られんぞ。命あっての物種とも言うしな」
「……」
理性では一理あると判断しても、感情がそれを許さない様子のルイズの顔を覗き込む。
「何も敵を前にして無条件で逃げろと言ってる訳じゃない。引けない戦いという物も確かに存在するしな。だが、何事にも柔軟な発想で臨んでほしいという事だ」
クロコダインはそう言うと、ルイズを肩に乗せ立ち上がった。
「きゃ!」
「今日はもうお開きにしよう。ルイズは寮の入口まで送っていこうか」
「え、でも、別に大丈夫よ」
ギーシュ達の手前もあり、赤面する顔を見られたくなくてそんな事を言うルイズだったが、
「そうもいかん。主をただ見送るだけではシエスタあたりに怒られそうだからな」
そう言われては断る事も出来ない。
怒った時のシエスタは妙な迫力があって怖いのをルイズは知っていた。酔った時はもっと怖い事も。
取り敢えず久し振りにクロコダインの肩に乗るのも悪くないと言い聞かせてみる。誰に言い聞かせているのか。自分にだ。
「も、もう、仕方ないわね! 送るからにはちゃんとエスコートしなきゃ駄目なんだからね!」
使い魔である獣人に無理を吹っ掛けるその態度は、どう見ても典型的な照れ隠しだよなあとギーシュ達は思った。


650 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/19(火) 22:55:48 ID:ViP0Q9df
虚無と獣王
12  幕間 『日常』 

ルイズがクロコダインを召喚してもうすぐ一週間が経とうとしている。
召喚の儀式から謹慎終了までは色々あって実に落ち着かない日々だった。
そんな主従の、フェオの月、ティワズのダエグはこんな感じで始まる。

クロコダインの朝は早い。
厩舎で寝泊まりする彼であるが、概ね日の出と同じ位に目を覚ます。
水場で顔を洗うと、クロコダインは学院の敷地を一周する。夜間何も異常がなかったかを確認する為だ。
夜の警備を担当している衛兵も既に彼の事は知っているので、欠伸を噛み殺しながら夜は何もなかったと話す。
使い魔たちは大体同じ時間に起きて来るので、朝の挨拶をしながら向かうのは中庭である。
今年度の使い魔で一番の大物(体長的な意味で)の風竜がいる時は他の使い魔たちと共に世間話に興じ、いない時はグレイトアックスを使ったトレーニングを行う。
最初は風竜がいる時もトレーニングをしていたのだが、やたらとお喋りな彼女が矢継ぎ早に話しかけて来る為、話し相手に徹する方がいいと判断した。
ここのところ竜の姿は見えなかった為、デルムリン島にいた時の様に斧を振るうクロコダインであったが、今日は広場に彼が着いたすぐ後に空から蒼い影が舞い降りてくる。
背に乗っているのは風竜の主である眼鏡を掛けた少女だ。
使い魔とは対照的に無口で無表情なその少女がクロコダインに黙って頭を下げる。
「ああ、おはよう」
朝の挨拶と判断したクロコダインがそう言うと、後ろに控えた風竜がきゅいきゅい!きゅーい!と人間には解読できない声を上げる。
「おはようなのね、王さま! シルフィおなかすいたのねー!」
風竜に限らず、他の使い魔たちも皆こぞってクロコダインの事を王と呼ぶ。
面映ゆいしお前達はオレの部下じゃないから止めてくれないかと言ってはいるが、聞き入れられた例はない。
「おはようシルフィード。もう少ししたら厨房までいくからそれまで待っていろ」
「ありがとなのね王さまー!シルフィがいくら言ってもお姉さまごはんくれないのねー!もうほんとにいじわるしてからにー!」
シルフィードと話した回数はまだ片手に余る程度だが、ここから怒涛の様な主への愚痴と惚気が始まるという事は学んでいる。
クロコダインは厨房へ行くのを少し早くする事にした。


651 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/19(火) 22:58:27 ID:ViP0Q9df
「よう! 今日は早いな『我等が声』!」
厨房裏口に現れたクロコダインを迎えたのはコック長マルトーのそんな一言だった。
もとよりマルトーはクロコダインに悪い印象を持っていた訳ではないが、先日の食堂パイ投げ事件は彼に何か感銘を与えたらしく、『我等が声』『我等が斧』などと呼ぶようになっている。
マルトーだけではなく下積みのコックたちやメイドまでそんな二つ名で呼ぶのだが、呼ばれる方はどう対応していいのか非常に困る。
面映ゆいしあれは子供の悪戯を叱っただけの事だから止めてくれないかと言ってはいるが、聞き入れられた例はない。
「シルフィードが腹を減らしていてな。何か食べさせるものはないか?」
マルトーは、なりはでかいがへんに子供っぽい印象の竜を思い浮かべた。
「ああ、あの青いのか。残り物で良きゃあ持っていってやってくれ。あんたの分はどうする?」
「オレはもう少し後で良い。毎日世話を掛けるな」
クロコダインの食生活は、召喚前より遥かに恵まれているといえる。食堂の一件以降はとても賄い食とは思えない豪華な料理が出てくるので有り難いが困惑もする。
「なぁに、遠慮はいらねえってもんさ。他でもねぇ、貴族の坊主どもにあんな啖呵が切れるアンタのメシなんだぜ。もっと豪勢にしてもいい位だ」
だからアレは少し叱っただけなんだがというクロコダインの主張は今回も聞き入れられず、逆に「謙遜する辺りが大人物だ」という評価しか得られなかった。

シルフィードに食餌を渡し、きゅいきゅいと喜ぶ声を背にクロコダインは学生寮へと向かう。
洗濯場を覗くが、シエスタは洗濯当番ではないらしく姿は見えない。
ルイズとはいつも学生寮の入口で待ち合わせをしている。もう起きているだろうかと思いながらクロコダインは歩を進めた。

まだ起きていなかった。
「うー……もう…食べられな……」
ベタな寝言ですね、とシエスタは思う。
彼女はいつもルイズを起こしに来る訳ではない。時間が空いていれば訪室するが、どちらかといえば仕事をしている事の方が多かった。
そろそろ起こそうか、と布団に手を掛けると、再び寝言が飛び込んでくる。
「…た、食べられないなんて言わせないんだからねっ……」
(夢の中でも素直じゃない、というか一体どんな夢……?)
疑問に思いつつ、シエスタは礼儀正しく掛け布団を勢いよく剥いだ。
「ぅひゃう!?」
愉快な奇声を上げて跳ね起きるルイズに対して一礼。
「おはようございます、ミス・ヴァリエール」
「シシシシシエスタ! ちょっとやっていい事と悪い事が!」
この起こし方は抜群に寝起きがいい、と脳裏に刻みつつシエスタは返事を返す。
「え、何か問題でしたでしょうか?」
不思議そうな顔をするシエスタにルイズは顔を真っ赤にして叫んだ。
「問題も何も、貴族相手の起こし方じゃないでしょ!」
「そんな!? 貴族様相手にするんですから物凄く丁寧ですよ! 田舎の弟妹なんかあんなもんじゃすみませんし!」
真顔で返されたルイズは思わず怒るのを忘れてしまった。
「いや、比べる対象が間違ってるような気がしないでもないんだけど、取り敢えず弟さん達はどういう扱いなの」
問われたシエスタは、んー、と天井をしばらく眺め、
「起きない場合はまず腕の関節を逆に」
「ゴメンネ、やっぱり言わなくてもいいわ」
「ちなみに寝ない場合は後ろに回って腰に手を回し後方にそのまま投げつけ」
「言わなくてもいいんだってばっ!」
田舎の平民マジ怖い、そう思うルイズであったが、単にシエスタの家が特殊だと知るのはもっと後の話になる。


652 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/19(火) 23:01:27 ID:ViP0Q9df
そんなこんなでルイズが制服に着替えて部屋を出る頃には、クロコダインは待ち合わせ場所に到着しているのが常だ。
「おはようクロコダイン! 待った?」
「おはよう、ルイズ。今来たところだ」
会話だけ抜粋するとデート前の恋人同士の様だが、実際にはピーチブロンドの華奢な少女と赤銅色の鱗の獣人が朝の挨拶をしているだけであった。
2人はこの時間に今日の予定を打ち合わせる。ルイズは当然のことながら授業に出るのだが、使い魔は別に出なくても構わないからだ。
ルイズの謹慎中、クロコダインはシエスタやマルトーに何か手伝えることはないか聞いて回っていた。ルイズからの許可も得た上の行動である。
2人とも大貴族の使い魔に仕事を振るのは躊躇われたのだが、本人が体を動かさないと落ち着かないと主張する為、薪を割ったり食材を運び込んだりといった力仕事を頼んだ。
クロコダインは何もしていないのに食事が出てくる生活はおかしいと考えており、どうもデルムリンでの生活が彼に勤労意欲というものを植え付けてしまった様だった。
昨日、つまりルイズの謹慎が明けて初めての授業にはクロコダインも付き添っている。
食堂で貴族の子弟を叱りつけた一件について使い魔如きが生意気なと反発する生徒も少なからずいるのだが、そういうのに限って表立って文句を言う度胸も無い。
これまでルイズを囃し立てる筆頭だったマリコルヌやモンモランシーも静かにしていた為、スムーズに授業は進行した。
教師たちにとって教室で睨みを利かす(様に見える)クロコダインは有り難い存在と言えるのかもしれない。
「それで今日はどうするの?」
「オレでも出来る仕事がないか聞いてこようと思う。なかったら授業に参加という事にしたいんだが」
「……授業はつまらなかったかしら」
わたしと一緒にいるのはつまらないのか、とは言えないルイズであった。
「単に体を動かしている方が性に合っているだけだが、そういう事なら授業を選択するとしようか」
もう少し素直に発言してくれと思いつつ、あっさり前言を翻すクロコダインであった。
「そそそ、そ、そういう事ってどういう事なのよ!?」
「どういう事なのだろうなあ」
結局主人に対しては甘く、今日も授業参観するクロコダインであったという。

放課後、ルイズはクロコダインと別れて図書室に向かった。
学院長とコルベールに許可を得て、教師しか閲覧できない『フェニアのライブリー』にも今の彼女は入る事が出来る。
ルイズが探すのは召喚に関する本だ。
クロコダインを必ず元いた場所に帰すと誓った身として、これは当然の事であるとルイズは考えていた。
しかし、相手は30メイルもの大きさの本棚にぎっしりと詰まった大量の本である。そして本棚は壁際に幾つも幾つも並んでいるのだ。
おまけに魔法が爆発という形でしか発動しないルイズは、高い場所の本を取る事が出来ない。
故に、彼女は助っ人を頼むことにした。
余り話したことが無い相手な上、ルイズとは違う意味での問題児で取っ付きにくい人物であったが、思い切って話を持ちかけると予想に反して快諾してくれた。
「待たせた」
そう言って現れたのは、クラスメイトのタバサである。
彼女に示した条件は、一緒に本を探し高い場所の本は取って貰う事、その代わりルイズが調べ物をしている最中はライブラリー内の好きな本を読んでいていいというものだった。
図書室の主、知識欲の権化たるタバサにとっては好条件だった様で、無表情ながらもどこか嬉しそうだとルイズは思う。
「悪いわね、都合のいい時だけで良いからよろしく」
「構わない。こちらも貴女に用があった」
「用?」
全く思い当たる節のないルイズに向かって、タバサはマントの影から一冊の小冊子を出した。
手にとって内容を確認したルイズは、愕然とした面持ちでタバサに問いかける。
「こ、これってまさか……! 噂には聞いていたけど、本当に実在したというの……!!」
タバサは頷き、言葉を重ねた。
「そう、『会』は実在する。わたしは会員として、貴女をスカウトに来た」
彼女が言う『会』とは一体何か。それを語るには女子寮で密かに語り継がれる噂話の事から説明しなければならない。


653 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/19(火) 23:04:27 ID:ViP0Q9df
いわく、トリステイン魔法学院には限られた女生徒しか入る事の出来ない秘密結社が存在する。
いわく、その結社の名称は『格差を是正し、資源を豊かにする会』というが、長い上にセンスが無い為『会』とだけ呼ばれている。
いわく、その『会』は古来からの民間伝承から最新の魔法理論まで調査し、研究を重ね、実践するエキスパートの集まりである。
いわく、『会』に入る方法は会員からのスカウトのみで、会員は決して『会』の存在を漏らしてはならない為、信頼できる人物にしか声を掛けない。

交友関係が広くないルイズにすらこの様な噂が届いていたが、学校にありがちな作り話だとばかり思っていた。
まあ、ホントにあるなら是が非でも入りたいと考えているのも事実だったが。
そんな噂話を聞いてから一年弱、今目の前にその会員と名乗る同級生が立っている。
「問おう。貴女は『会』に入る意思はあるか」
「答えを言う前に、ひとつだけ聞かせて」
ルイズは一旦言葉を切り、タバサに真剣な眼を向けた。
「どうしてわたしをスカウトしようと思ったの?」
答えるタバサもまた、真剣であった。
「アルヴィーズの食堂で、貴女の言葉を聞いた」
そう、ルイズは謹慎の原因となったあの騒ぎの中で、身体的特徴をあげつらう女生徒にこう言っていたのだ。

『どどどどうしてここここで胸の話題が出てくるのよ関係ないじゃないそそそんなに胸がありゃいいってもんじゃないわよ牛じゃあるまいし全くふんとにこれだからゲルマニアンはッ!』

騒ぎに加わる事なく、我関せずを決めこんでハシバミ草サラダを補給していたタバサの耳に、その言葉は凛とした響きを持って届いたのである。
いつの間にか、ルイズの瞳には涙が浮かんでいた。
わたしの言葉が聞こえていた。わたしの言葉を聞いてくれている人がいた。わたしの言葉で心を動かしてくれる人がいた。
その事が無性に嬉しかった。
「ありがとう、わたしをスカウトしに来てくれて。喜んで入会するわ」
ルイズは笑顔で礼を言うと、タバサはふるふると首を振る。
「わたしたちとしても、創設者兼名誉顧問の血縁者が入会するのは喜ばしい事」
返ってきた意外な言葉にきょとんとするルイズに、彼女は渡した小冊子を捲らせた。

『  序文
このハルケギニアの地には様々な格差が存在していますが、最も憎むべきはただ大きいだけの脂肪分を巨乳と尊び、微かな乳と書いて微乳と呼ぶべき存在を貧乳と称し蔑んでいるこの風潮であると言えます。
 わたしはこの現状を憂慮し、微乳でも誇りを持って生きていける社会を創造する為、この会を立ち上げました。
しかし、長年蔓延ったこの格差と風潮は一朝一夕で是正できるものではありません。
従って、個人の資源を最大限に発揮させる事で少しでも胸を大きくさせる研究も同時に進行させるのが、わたしが始祖より与えられた天命であると考えています。
わたしたちは揉まれれば大きくなるという古来からの民間伝承から、アカデミーで研究される様な最新の高度な水魔法による肉体改造までをも調べ上げ、その身で実践していかなければなりません。
恵まれし者達は、私たちの行動を見て笑うでしょう。しかし、嘆いてはいけません。
わたしたちの歩みは遅くとも、決して後退する事はなく、歩き続けてゆけば必ず約束の地へ辿り着くのですから。

ブリミル暦 6230年   エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール  』

ルイズが床に突っ伏したのは言うまでもない。
結局その日、召喚魔法について調べる事は当然のことながら出来なかった。


655 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/19(火) 23:08:39 ID:ViP0Q9df
夕食の後、昨日に引き続き有志による近接格闘訓練(もしくは使い魔の運動不足解消計画)が始まった。
但し、昨日と違うのは、女子生徒の見学者がいるという点だ。
「あんたたち何しに来たのよ」
監督ルイズの問いに最初に答えたのはキュルケである。
「えー、何か面白そーなことやってるから、ちょっと野次でも飛ばそうと思って」
けらけらと笑うキュルケの横で、本から目を離さずにタバサが言う。
「その付き添い」
さらにその横にはギーシュと一応仲直りしたと思しきモンモランシーがいて、
「万が一怪我したら直してくれって頼まれたのよ。かすり傷程度なら水の秘薬なしでもいいだろうし、魔法の実践にもなるし」
「へー? てっきりわたしはギーシュがついにルイズにまで手を出したかと疑ってここに来たのかと思ったんだけどー」
「そんなわけないでしょっ!」
「ていうかルイズにまでって何よまでって! あまりふざけた事言うと酒瓶持ったシエスタに部屋強襲させるわよ」
「うん、いいわよね魔法実践! がんばってモンモランシー!」
外野が馬鹿を言っている間にも、男子学生たちは順調に張り飛ばされていた。

反省会(もしくは今日のツッコミ)が終了し仲間たちが解散した後、ルイズはクロコダインに尋ねた。
「明日は虚無の曜日だからちょっと王都まで行ってくるけど、クロコダインは何か買ってきて欲しい物はある?」
本当は学院から出た事のないクロコダインと共に王都まで行くつもりのルイズであったのだが、二つの要因からそれは諦めざるを得なかった。
先ず、王都までは馬を使って移動するのだか、学院にはクロコダインが乗れる馬が無いという事。
学院には、というよりハルケギニアには、と言った方が正確なのだが。
体長3メイルの巨体を乗せて走る馬というのは、正直モンスターの類であろう。
次に、未知の獣人が王都に出現するのはあまり宜しくないという事。
使い魔慣れしている学院だからこそクロコダインも問題にならない訳で、逆に魔法に詳しくない平民が大多数の王都で問題なく過ごせるとは限らない。
下手すれば王城から魔法衛視隊が出動しかねないのだ。
そんな訳で、せめて何か希望の物があれば買ってこようというのがルイズの思惑であった。
「そうだな……。何が売っているのかオレには判らんが、長めの革紐の様な物があれば有り難いか」
クロコダインは傍らの戦斧を見ながら言った。
「こいつを持って歩く時は必ず片手が塞がってしまうのでな。丈夫な紐があれば背負う事も出来る」
「革紐かー……。馬具を扱う店なら置いてあると思うんだけど」
考え込むルイズの頭を撫でながら、クロコダインは言う。
「無理をする事はないぞ。大至急必要だというものでもないからな」
「いいわよ、わたしも乗馬用の小物とか見たいと思ってたし」
「そうか、では頼む」
そんな事を話しているうちに、就寝時間が迫ってきた。
昨日の様にルイズを肩に乗せ、クロコダインは学生寮を目指す。
こうして凸凹主従の一日は暮れていくのだった。



657 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/19(火) 23:11:56 ID:ViP0Q9df
以上で投下終了です。
怪盗フーケ颯爽登場の回を書こうとした筈なのですが、一体私は何の電波を受信したのでしょうか
貧乳バンザーイ

次回こそフーケ登場の筈です
電波を受信しなければですが



823 名前:虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I [sage] 投稿日:2008/08/29(金) 21:14:45 ID:fgJ+vP7R
埋めついでに小ネタをひとつ

え?彼女を召喚した時の事?
勿論よく覚えてるわ。
だってねぇ、何度も何度も失敗して、やっと成功したと思ったら。
立っていたのが最上級のマントとドレス着て、王冠をつけたわたしと同じ位の女の子なのよ?
とてもじゃないけど忘れられないわ。
聞けば即位式の直前に召喚のゲートをくぐったって言うじゃない。どれだけわたしが焦ったかわかる?
なのにあの子ったら平気な顔で「帰るまでは使い魔やってもいいわよ」なんて言うんだもの。
しかも理由が「なんか面白そうだし」って。ほんと大物よね。
ただ先生や学院長とはしっかり交渉してたわ。結局表向きは某国の王族留学生って事になったの。

そうね、本当にしっかりしてたわ。
貴族嫌いの怪盗が彼女の事を守ったりする位、毅然としているのよね。
わたしの国の王女様、あ、今は女王様なんだけど、その姫様に密命を受けた時も、王族としての心構えを説いていたわ。
しかも四系統魔法全てを使いこなす力を持ってるんだもの、今だから言えるけど、それを知った時は嫉妬したわ。
でも、わたしが八つ当たりしちゃった時、彼女は言ったの。
「そこで諦めたら本当にゼロになっちゃうわよ」って。
そして魔法の使えない男の子の話をしてくれたの。
ふふ、なによ。赤くならなくてもいいじゃない。

あら、立派すぎるなんてそんな事言っていいの?
まあね、確かにそれだけじゃないわ。
良く言えば好奇心旺盛で、悪く言えばトラブルメーカーだったもの。
特に人の恋愛沙汰には必ずと言っていいほど首を突っ込んで。
一度なんか、決闘騒ぎになった位なんだから。
まあね、自分が召喚しておいてなんだけど、即位式の直前に怪しげなゲートをくぐるくらいだものね。
本人は「だってこういうの見たら、入ってみたくなるものでしょ!?」って言ってたけど。
そう言えば町で宝の地図を大量に買い込んできた時もあったわ。
ええ、勿論全部ニセモノだったわよ。宝探しに付き合わされる身にもなって欲しいと思わない?
え?うー、そ、それは確かに楽しかったけど、で、でも大変だったんだからね!

うん、確かに、主人と使い魔というより、友達として付き合ってたと思う。
わたしが裏切り者に殺されそうになった時も。
捨て駒として七万の敵の足止めを命じられた時も。
使い魔としてじゃなくて、仲間として、友達として、一緒に戦ってくれたわ。
魔法が使えなかった時も、虚無の担い手になった後も、変わることなく、ね。

後の事はもう知ってるでしょ?
ガリアのヨルムンガルドに包囲された時、わたしの『世界扉』のむこうからやってきてくれたアンタなら。
どんな攻撃も跳ね返すあの人形を、素手で薙ぎ倒しちゃうんだもの。本当に凄いわよね。
ちょっと!なんて顔してるのよ!
そりゃあ最初は驚いたけど、今アンタの事を怖がってる人なんていないわ!
そもそもあれ位の事ができなきゃ、あの子につり合いなんてしないでしょ!
大体アンタと再会した時のあの子の笑顔、見てないの?
わたしといる時にあんな顔なんて一度も見た事無かったんだから!
も、もも、もうちょっと自信持ちなさいよね!

あ、もう向こうも準備終わったみたいね。
じゃあ、招待席にもどるわ。
もう勝手にどっかに行って、わたしの親友を心配させるんじゃないわよ!
もっとも、結婚式がすんだら二度と離さないって言ってたけど。
レオナにここまで言わせるんだから、本当に果報者よね。
ちょっと、聞いてるの? ダイ。


以上、レオナ召喚小ネタというか、結婚式直前回顧録byルイズでした。



95 名前: 萌えっ娘。名無しさん 投稿日:2009年08月16日 13:27
ダイ大は殆んど知らなかったが、今度立ち読みしてみるかな…


96 名前: 萌えっ娘。名無しさん 投稿日:2009年08月16日 13:41
ダイはマジお勧め

これ読んでもう一回読み返か・・・・・・


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